アイルランド、スコットランドという伝統国2カ国を破り、初のW杯8強という快挙に沸く日本ラグビー。
1991年の第2回大会からラグビーW杯を取材。前回大会の南ア戦“ブライトンの奇跡”も現地取材したジャーナリストの村上晃一氏に聞く、日本代表キーマンの横顔。
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日本がスコットランドを28‐21で破った死闘、私はJ‐SPORTSで現地解説をしていました。横浜国際競技場には6万7000人が詰め掛け、日本代表の国内の試合としては歴代最多観客。選手たちもこれまで感じたことのない応援の力を感じていたと思います。
日本がW杯で8強に進出したこと、これは世界のラグビー史上最大の快挙と言っていい。「日本は体が小さくてラグビーは不向きだ」とずっと揶揄されてきました。そのチームがフィジカル面で堂々と渡り合い、ラグビー伝統国のアイルランド、スコットランドを見事に破ったんですから。
そもそもラグビーは体をぶつけ合う、半分格闘技の世界です。でも格闘技と違って“階級制”がない。だから日本がティア1(※)の国に勝つことは、ボクシングでミドル級の選手がヘビー級の選手を倒す、そんなイメージではないでしょうか。それを今大会だけで2回も達成してしまった。
<※ティア(Tier)1 …ラグビー界の「階級」。欧州6カ国(イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリア)と南半球4か国(ニュージーランド〔NZ〕、オーストラリア、南ア、アルゼンチン)。日本は中堅国にあたるティア2。>
どの国でもレギュラーになれる選手たち
日本代表のこの快進撃はチーム力なくして語れません。だから誰か特定の選手が勝因だということも言えない。
ただ、今の日本にはどの国のどんなクラブに入ってもレギュラーを取れる素晴らしい選手が揃っているのも事実です。堀江翔太、リーチマイケル、ピーター・ラブスカフニ、松島幸太朗、福岡堅樹に稲垣啓太……みんな世界トップレベルの選手と比べても遜色ない。そういう意味でも日本ラグビーにとって幸せな時代です。
特に2011年のW杯NZ大会から2番(フッカー)のファーストチョイスはケガがなければ堀江です。2011年、日本としては4戦勝ちなしでしたが、堀江とリーチはW杯でも十分通用している、という印象がありました。