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「補償」と「賠償」は別モノという論理

 いわゆる徴用工問題について文氏が強調したのは、個人の請求権は日韓請求権協定ではカバーされていないということだ。

「請求権協定では補償に関する問題だけが出ました。『補償』とは合法的なものに対する財政的補填のことを言い、『賠償』とは不法なものに対する財政的補填のことです。だから、六五年体制の基本枠組みは維持するが、そこでカバーしていない部分――第一に植民地支配の不法性、第二に強制動員された徴用工、第三に彼らが受けた精神的被害――に対する賠償をしてくれなければならないということです」

韓国最高裁は三菱重工や新日鐵住金などの日本企業に対し、元徴用工への賠償を命じた ©AFLO

 つまり、「補償」と「賠償」は別モノであり、日本は「賠償」をしなければならない、という論理である。

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「日本がこんな政治的判断をして、韓国は本当に怒っている」

 さらに文氏は、日本は請求権協定によって韓国に支払った8億ドルよりもはるかに多い金額を韓国から稼いできたことを指摘した。

「率直に言いますと、1965年から2018年まで50年以上もの間、韓国は一度も日本に対して貿易黒字になったことがないのです。逆に日本が韓国から稼いだ貿易黒字は6800億ドル。単純計算して、韓国に供与したお金の850倍の利益を日本が得たということです。インフレ率を考慮しても、100倍以上にはなります。私たちはずっと日本企業を信頼してきた。なのに日本政府がこんな政治的判断をしてしまったので、韓国は本当に怒っているのです」

 外交交渉をするには、まず相手国の内在論理を知らなければならない。

文藝春秋11月号

 文在寅政権の内在論理を知るための絶好のテキストである文正仁特別補佐官のインタビューは、「文藝春秋」11月号に掲載されている。