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宮本 とはいえ、さすがに中国で経済を真面目にやっている人なら香港経済の重要性は理解しています。上海や深圳では香港の代わりは務まらない。というのも、海外の対中投資の70%は香港経由だからです。もし香港が混乱すれば、欧米企業がパニックになります。

 この点から見ても北京政府がデモの鎮圧に乗り出す可能性は低いでしょう。ただし、デモの一部がさらに過激化し、当局がさらに厳しい態度をとった時に、偶然にでも大陸から来た人が命を落とすとか、衝突して双方に死傷者が出るとか、偶発的な事件が起きてしまうと新たな展開が起こりうる。これが怖いですね。

「香港問題」は「台湾問題」ともリンクしている

阿古 最悪のシナリオです。ただここまでデモが長期化しているのは、香港に習近平の中国に対する恐怖があるからです。

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 大陸のやり方が香港に入ってきてしまうと、香港でのビジネスのやり方も根本的に変わってしまう。「中国モデル」では今まで自由にやっていた民営企業がいきなり財産を差し押さえられて倒産させられたり、経営者が拉致されたりする。共産党は「法の支配」を行う気は全くありません。「法」より「党紀」をタテに自分たちに都合の悪い存在に次々圧力を加えている。そんなやり方で香港を統治されていいのかという危機感は、富裕層から低所得層まで共有されています。デモがこれだけ長期化しているのは階層を超えて協力する基盤があるからです。

民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)は日本語での発信も続ける ©AFLO

中澤 「香港問題」は「台湾問題」とも直接リンクしていますね。来年1月に行われる台湾総統選までに北京政府が武力介入すれば、対中強硬派の蔡英文総統の再選に追い風となり、習近平政権にとって大きな痛手となるのは確実です。

文藝春秋11月号

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 さらに座談会では、毛沢東並みの独裁体制を築きあげつつあるとされる習近平体制の内幕、米中貿易戦争の背景とその行方、中国経済の今後についてまで論じている。