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ノーベル賞すら通過点! “現代テクノロジー社会の神”吉野彰71歳が思い描く「未来の世界」

われわれは吉野氏の“球”を打ち返せるだろうか?

2019/10/11
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吉野氏が思い描く「未来の世界」とは?

 その具体像は今や明らかだ。電気自動車のための車載電池としてリチウムイオン電池が注目されているのである。

 吉野氏は、自動車の10%程度が無人で走る(自動運転の)電気自動車に置き換われば、電力問題が解決するのではないかと見る。無人電気自動車が地域を走り回り、太陽光発電などで電力が余っている場合にはそこで充電し、電力が足りない場所へ移動して放電する世界を構想しているという。

©iStock.com

ポルトガルで始まった「スマートアイランド」計画

 ポルトガルのポルト・サント島では、警察車両の一部を電気自動車(ただし無人ではない)に置きかえ、車載電池を地域の電力系統に接続して充放電する世界初の「スマートアイランド」計画が今年開始された。関東に巨大台風が近付き、停電も心配される今こそ関東にほしいシステムだが、吉野氏が思い描いていた社会は着実に近づいている。

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 スマートフォンなどの小型機器と電気自動車では、リチウムイオン電池に要求される性能が異なる。地域の電力を賄うとなると、さらなる技術革新が必要だ。

ノーベル賞受賞の記者会見を行う吉野彰氏 ©AFLO

 投手と捕手とボールだけでは野球はできない。面白い試合をするには、野手もバッターも必要だ。リチウムイオン電池でいえば、プラス極とマイナス極の間を埋める電解液、電子を集める集電体にも優秀な「選手」が不可欠である。社会インフラの整備も必要になる。われわれは吉野氏が育てたバッテリーの球を打ち返せるだろうか。

ノーベル賞すら通過点! “現代テクノロジー社会の神”吉野彰71歳が思い描く「未来の世界」

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