こうしたアンビバレントな国民感情の中で、事態は長期化したわけですが、結果的には、とどまるところを知らない”タマネギ男”のスキャンダル発覚に、ついに国民の堪忍袋の緒が切れて、「曺国を罷免せよ」に一気に傾いていきました。
与党の若手に溜まった不満
また、国民感情とは別のところで、与党の若手議員を中心に、このまま曺国を法相に据えたまま来年4月の総選挙に突入するのは避けたい、なんとか彼を引きずり下ろしたい、という動きもありました。
彼らは元・与党の重鎮議員のもとに駆け込み、「青瓦台になんとか言ってくれないか」と不満を伝えていたそうです。与党の若手議員からすれば、表立って曺国に「辞めろ」と言うと、政権に逆らったことになり、党からの公認を受けることが難しくなることが考えられる。かといって、黙っていると来年の総選挙で負けてしまう。にっちもさっちも行かない状況を打開するために、重鎮議員に外野から指摘してもらおうという魂胆でした。いわば与党内部からも不満が噴き出していたわけです。こういう動きは、朝鮮日報が「11月までに曺国を整理しなければ総選挙は戦えないと与党内部からも声が上がっている」(10月14日付)と報じられています。
そんな状況に加えて、今週末に曺国の妻に逮捕状が請求されるという見通しもあり、今週予定されている法務部と検察への国会議員による「国政監査」でも厳しい追及が予想されています。それで、政権もついに庇いきれなくなったのでしょう。
今回の曺国辞任までの一連の騒動で、明らかに政権与党は大打撃を受けました。ただ、これで一挙に政権が崩壊するかというと、そこまでは至らないと考えます。
野党の支持率が上がっていますが、「崩壊」と呼べるほど大きな流れになっているわけではない。むしろ曺国辞任によって、国民感情は「みそぎは済んだ」という方向に向かう可能性もあります。それだけに政権の方針が一変するということも考えづらい。もともと、検察改革に対する世間の支持はあります。蜥蜴の尻尾切りによって、文大統領は立て直しを図ってくるでしょう。