「曺国(チョ・グク)辞任」の一報を受けたとき、むしろ遅いと思いました。そもそも文在寅大統領による任命自体が間違いで、常識的に考えればあれほど疑惑を抱えて家族も捜査を受けている状態の人間を法相に就任させることはありえません。
ただ、これだけ事態が長引いた背景には、検察改革をめぐる韓国の複雑な国民感情があるのです。
曺国任命を強行した理由のひとつに、曺国でなければ検察改革を強力に推進することは難しいという文大統領の強い思いがありました。国民の間でも、この「検察改革を強力に推進したい」という気持ちには多くの人が賛成しています。
一方で、検察改革には賛成だが、本当にそれは曺国のもとで行わなければならないのか、別の人物ではダメなのか、という思いを抱く国民が大勢いたのも事実です。
こうした国民感情は、最近のデモにもよく表れています。曺国を支持する進歩派(改革派)の集会にも、曺国をやめろという保守側の集会にも、若者は少ない。無党派層の多い若者は、どちらにも乗り切れないのです。
つまり、検察改革を行わなければならないという曺国の志には同意するが、まさに”タマネギ男”と呼ばれるほど疑惑にまみれた曺国の人間性には賛同できない、ということです。検察改革に期待を寄せる若者を裏切った結果となったことは、曺国自身もよくわかっていて、辞任のコメントの中で「特に若者に対しては申し訳ない」と述べていました。