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「男の子の成績不良」という世界的な傾向から考える“男子校の存在意義”

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男女の得点差は脳科学で説明できる?

 同誌は「脳科学ですべてがわかるわけではない」としながらも、「中学校においては、男性の性的な成熟は女性に比べて約2年遅れている」「脳の厚さは女性が11歳で最大になるのに比べ、男性は18カ月遅れる」「5歳から18歳の男女に情報処理能力のテストをすると、幼稚園では男女の差はないのに、思春期には女性のほうが『速くて正確』という差が生じ、18歳には再び男女の差がなくなる」など、男女の発達上の違いを科学的に指摘している。

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 そして一つの解決案として、主要教科で男女別学のシステムを導入したコロラド州プエブロのロンカリ中学校の例を紹介している。「恥ずかしがり屋な男子が授業に前向きに参加するようになった」「数学、英語、科学の成績で女子クラスがトップになり、続いて男子クラスが共学クラスより上になった」という成果の兆候があり、別学が男女両方にとってメリットがあるとの見解を示している。

 この問題は「ボーイズクライシス」(男の子たちの危機)などといわれ、その後世界中で盛んに議論されるようになる。

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 2002年には、イギリスの国立教育調査財団(The National Foundation for Educational Research)が、計2954の高校を調査した結果を発表している。学力差などもともとの背景要素をなくしたとしても、明らかに共学よりも別学の学校のほうが男女ともに成績が良く、女子校の生徒は、高等数学や物理などの「一般的に女性的でない」とされる教科を選択する確率が高いなどの傾向がわかり、生徒の学力を最大限に伸ばすため、「公立の学校は、1学年180人前後で構成し、男女別学にすべきだ」とまとめている。

 2005年、イギリスのケンブリッジ大学は教育における性差に関する4年間の研究結果を発表した。研究チームは何百にもおよぶ学校を調査し、男女の学力差を埋めつつ、男女それぞれの学力向上を成し遂げるための戦略を模索した。この研究では、単に観察をしてレポートをまとめるだけではなく、成功事例がある学校の戦略を、あまり成功していない学校に導入するという指導まで行っている。そしてその戦略の一つに、男女別学化があったのだ。男女別学化することにより、男子生徒は英語と外国語で、女子生徒は数学と科学で、それぞれ顕著な効果が見られた。

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