「『男女に変わりはない』という建前を取り払う必要がある」
ACER(The Australian Council for Educational Research オーストラリア教育研究審議会)が6年間にわたり、計27万人の生徒に行った調査では、男女別学で学んだ生徒のほうが15~22%も成績が良く、しかも生活素行も良く、学習を楽しいと感じたり、学校のカリキュラムを価値あるものと認識する割合が高いと報告されている。そして、「12歳から16歳の年齢帯においては、認知的、社会的、発達的な成長度合いの男女差が大きく、共学の学習環境には限界がある」と結論づけている。
NASSPE(National Association for Single Sex Public Education、著者訳:男女別学公教育協会)には、アメリカのみならず世界各国から、男女別学のメリットを示すデータが数多く寄せられている。NASSPEの代表であり小児科医のレナード・サックス氏は、男女の脳の構造や機能の違いから、男女それぞれに応じた教え方があることを訴えている。彼の主張によれば、そもそも男性と女性ではものの見え方も聞こえ方も違うというのだ。
ただし、サックス氏らの説に異を唱える研究者も少なくない。神経科学者で『女の子脳 男の子脳』(NHK出版)の著者リーズ・エリオット氏はその1人である。彼女は「残念ながら、サックスは男女別学校の実際のデータとして、彼が主張する男の子と女の子の神経学上の違いと同様、都合のよいものしか取り上げておらず、男性と女性、もしくは共学と男女別学が本質的に変わらないことを裏付けるすべての証拠を公平に評価する努力に欠けている」と批判する。
ただしリーズ・エリオット氏も「性差はある」と主張する。そして、「男女別学を勧める人たちが、男の子と女の子の意欲や対人関係の違いを根拠にしているならば、そちらのほうが根拠としては確かだろう。とくに、男女が発達期に互いに距離を置き、保護される時期を作ることはよいかもしれないという考えには説得力がある」「学校は男の子にとって以前よりすごしにくい場所になっている。教師や親は男子特有の長所短所を知り、有効とされる教授法を踏まえたうえで指導すべき」「男女別学校を成功させるには、男女平等という目標と、男女は違うという前提を上手に調和させる必要がある。同じように、共学校でも、男女に変わりはないという建前を取り払い、性差が、子どもたち一人ひとりが必要とするものの土台になっていると認める必要がある」などと述べている。