「自分の考えはとても異常だったと思う。事件のことは後悔しています」――37歳のアイドルファンの男性が、推していた地下アイドルの女性を殺害…。遺体損壊にまで及んだこの事件の結末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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「お母さん、オレ、人を殺してしまったんだよ」

 いよいよ有希さんを食べようと思い、首と胴体を切断した。

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 ちょうどそのときに渡辺の母親から電話がかかってきた。

「アンタ、今日の晩御飯はどうするの?」

「要らない。今、それどころじゃない。切るね」

 渡辺は切断した首を洗浄し、それを持ち帰ろうと思ったが、遺体をそのままにしておくのは無理だと思った。かと言って、胴体を全部食べるのはもっと無理だと分かった。遅まきながら、自分がしでかしたとんでもない犯罪と向き合うことになった。

「自殺しよう…」

 でも、そうなったら消費者金融から大量な督促状が自宅に届き、意味が分からない母親が困るだろうと思い立ち、生前にやるべきことをやってからにしようと考えた。

「お母さん、自宅にサラ金から督促状が届くかもしれないけど、払わなくていいから」

「えっ、どういうこと?」

「とにかくそういうことだから」

 渡辺はそれから4時間、遺体と向き合った。自分がやったことを他人に知らせるため、首の断面図の写真も撮った。だが、死にきれなかった。明け方に再び、母親に電話した。

「お母さん、オレ、人を殺してしまったんだよ」