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荒川の河川敷に住むホームレスは、台風の夜をいかに過ごしたのか

小屋は水没、水位が腰の高さまで……

2019/10/18

genre : ニュース, 社会

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路上生活者たちはスマホを持っていない

 委員会は台風が上陸する2日前、公益財団法人城北労働・福祉センターの娯楽室の夜間開放を要請した。センターは、台東区と荒川区にまたがる山谷地域の中心部にあり、日雇い労働者に職業紹介を行っている。その地下1階にある娯楽室は平日午後8時半まで、周辺に住む路上生活者や生活保護受給者の憩の場として利用が可能だ。しかし、委員会の要請は受け入れられず、台風直撃当日は正午で閉館。路上生活者たちは閉め出される形となった。

 

 委員会は、台東区役所にも問い合わせたが、「区の避難所は基本的に路上生活者をお断りしている」という回答だったため、会館建物を開放し、立花さんら路上生活者約20人を緊急に受け入れた。

 会館には宿泊せず、荒川河川敷近くの公園や「自分の隠れ家」へ避難した路上生活者も多数いたという。路上生活者たちはそもそも、スマホを持っていないなどネット環境がないため、各区が指定する避難所の場所すら分からない人も多い。

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「人権を無視」「差別」と非難

 路上生活者の避難拒否問題を受けて、委員会のメンバーと路上生活者らは台東区役所を訪れ、危機・災害対策課の係長に直接抗議した。区の対応について、委員会のメンバーはこう非難する。

「山谷地域もあるので、特に台東区には路上生活者が多い。その状況を認識しているべきなのに、人権を無視した態度を取ったことに対しては許せない」

「路上生活者たちは人間扱いされていないと憤っている。自分の命を守るために、近くに避難所があったら避難するのは当然」

「あいつらは税金を支払っていないから追い出して当然だ、というメッセージを発したと受け取られても仕方がない」

 

 立花さんも、人づてでこの問題については耳にしていたようで、私の取材にこう語った。

「路上生活者っていうのは、やっぱり人間じゃないんだよね。差別だよね」