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プライベートな空間に籠もって本をめくる至福

「こういうのが、誠品っぽいんですよね」とトークが終わって書店を歩きながら吉田修一が指摘したのが、3段ほどの階段でフロアに高低差がつけられた設計だった。「台湾だとこのステップのような場所に腰をおろして、みんな本を読むんですよ」。少し高くなった場所から、どこまでも本が並ぶ景色を見渡すのは壮観だ。また壁の手前にレイアウトされた書棚の奥には椅子が設置されており、書店でありながらプライベートな空間に籠もって本をめくるような感覚を得ることもできる。モジュールだけでなく、店舗内装でも本好きの気持ちを“わかっている”書店なのだ。きっとこういう感覚は、日本も台湾も変わりがないだろう。

工夫を凝らした店内

 吉田修一が出会った、深夜に立ち読みをしたり、食事の帰りに気軽に寄って雑誌をめくったりする光景は、書店が日常の中に自然に存在することを示している。誠品は、若者の日常の中にソフトとハードの両面において、肩肘張らずに本と触れ合える機会を提供している。

台湾茶のティーサロン「ワンダーチュアン」

 台湾は今、日本で大変な人気で、男性誌女性誌、またはムックや単行本などで、数多くの特集や関連本が出版されている。あのタピオカミルクティーも台湾では日本よりもかなり前からブームとなっていた。感覚の早さ、場の魅力という面でもアジアでひときわ輝く存在である。その中心にいるのが誠品生活である。誠品は若者の日常にさり気なくそして心地よく文化をまとわせる。これが日本でも定着するか否か。その答えは、誠品生活日本橋の今後にかかっている。

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撮影:榎本麻美