終わりの見えない香港デモ。6月、8~10月と現地で取材した安田峰俊氏が挑む「日本一わかりやすい解説」後編。(全2回/#1より続く

デモ隊の若者によって火が付けられ、燃え上がるバリケード(10月1日) ©共同通信社

◆◆◆

Q7. 人民解放軍は来るの?

――中国の武装警察や人民解放軍が香港のデモ隊を鎮圧しないんでしょうか?

ADVERTISEMENT

A7. 9月までの時点では「ありえない」話だったが、10月以降は一笑に付せなくなってきた、というところだと思います。

 もともと、日本のメディアは6月時点から「人民解放軍が来る」「天安門再び」と煽る例が多かったですが、これは香港への予備知識がなく「中国(香港)のデモなら天安門事件」という単純な連想によるものでした。香港基本法(憲法に相当)には、香港がコントロール不能な状態になった場合の中国内地からの介入を認める条項がありますが、一国二制度の縛りもありますし、現実的にはよほどのことでないと実行されません。

 ただ、10月1日の国慶節(中国の建国記念日)の前後にデモ隊が暴れすぎたこともあってか、林鄭月娥は禁じ手である緊急法を発動しました。これはすでに「よほどのこと」ですから、今後は何が起きても不思議ではありません。

 

 実は香港にはもともと、人民解放軍の駐港部隊6000人が駐留しています。彼らは市民生活とほぼ断絶している存在でしたが、緊急法の施行後は市内を軍用車で巡回して威嚇したりしている。逆にデモ隊側も(実はこれまで中国政府関連施設にはわずかしか攻撃してこなかったのですが)10月6日には九龍塘にある解放軍施設をレーザーポインターで照射。対して施設内から、「攻撃をやめろ、さもなくば思い知らせる(後果自負)」とアナウンスが出るなど緊張した状況になりました。

 現時点での駐港部隊の動きは単なる脅しにとどまるのですが、今後の情勢次第ではどうなるかわかりません。本来はありえない話のはずですが、すでに何でもありの状況ですので……。