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Q8. 香港警察に人民解放軍は加わっている?

――中国の武装警察や人民解放軍が、香港警察の部隊に大勢加わっているという話もありますが?

A8. 日本の独立系ジャーナリストのメディアなどが伝えていますが、こちらは現時点ではほぼデマと見ていいでしょう。デモ隊や市民の間では風説レベルでそうした話があるものの、裏は取られていません。「香港人が同じ香港人にあんなひどいことをするはずがない」といった話は根拠にもならないでしょう。香港でも日本でも、警察は本質的には市民を守るためではなく体制を守るために存在する暴力装置だということです。

 香港警察内部にもデモ隊のシンパはおり、人民解放軍や武装警察の人員が組織的に加わるような事態があれば、ネットで内部告発がなされるはずです。また、この記事のように、香港警察はデモ後は慢性的な人手不足にあるとされます。中国国内から人員のヘルプがあるなら、香港警察はここまで苦しんでいないでしょう。

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 ちなみに、武装警察とは中国国内で大衆運動の鎮圧などをおこなう準軍事部隊を指します。対して、香港でデモ隊を鎮圧している香港警察の普通の部隊は通称「防暴」、精鋭部隊が通称「速龍(スピードドラゴン)」です。日本側の週刊誌報道などで、フル装備の香港警察を「武装警察(武警)」と呼び、さらに中国国内の武警と混同して「中国から人が入ってきている」といった書き方をしている例がありますが、間違いです。

銅鑼湾を歩く完全装備の警官隊。ちなみに、香港警察の上層部で暴徒鎮圧指揮を取っているのは、植民地時代から勤務しているイギリス人幹部である ©安田峰俊

 ほか、ネットなどでは「香港警察が普通話(標準中国語)や中国訛りの広東語を話していた。正体は大陸から来た武警や解放軍だ」といった話もよく流れています。しかし、香港はもともと移民都市で、返還前から中国大陸出身者を新規に数多く受け入れ続けています。移民やその子どもは職探しが大変ですが、警察の末端なら就職は比較的簡単です。普通話が母語だったり、中国訛りの広東語を喋る香港人(=移民)が警察のなかにいた、と考えるほうが妥当ではないでしょうか。