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2019/10/29

マハトマ・ガンディーの誕生日に最初のトイレ

 トイレ設置キャンペーンで、モディ首相が最初のトイレを作った10月2日は、美化運動に積極的に取り組んだインド独立の父、マハトマ・ガンディーの誕生日だった。ガンディーはインドの衛生状態改善を訴え、伝統的に低いカーストに属する人々の仕事だった清掃の仕事に自ら取り組むよう、国民に働きかけた。「公衆衛生は政治的独立よりも重要だ」という言葉も残している。

 ニューデリーの中心部から国際空港に向かう道沿いには「トイレ博物館」がある。トイレの普及運動を進めてきたことで知られる、国際ボランティアNGO「スラブ・インターナショナル」が運営するもので、世界中の珍しいトイレが集められている。インド政府による「トイレ革命」の原型ともいえる社会運動だ。

スラブ式二槽トイレ(著者撮影)

一石三鳥のスラブ式トイレ

 スラブが推奨するトイレには特徴がある。排泄物をためる壺を2つ備えているのだ。便器から流される排泄物はパイプの流れを切り替えることで、2つある壺のうちどちらか一方にたまる仕組みになっている。排泄物がたまれば、パイプの流れを切り替えて最初の壺の利用を止め、中にたまった排泄物が肥料になるまで待つ。自然乾燥させて無臭の固形物ができ上がれば、コストのかからない堆肥、燃料として利用できる。乾燥するのを待つ間は、もう一方の壺を使う。上から排泄物を積み重ねるだけでは、たまっていく一方だが、2つの槽を交互に使うことで循環型にしたトイレだ。

 インドではもともと、野外排泄物の処理は最下層の人々が手作業で担い、その仕事は世襲制で代々引き継がれてきた。スラブでは、そうした清掃カーストの人々を教育し、別の職業に就く道を開いている。スラブ式トイレの設置は、ブータンやアフガニスタンでもスタートし、国際的な評価を集めている。2009年には「水のノーベル賞」といわれる「ストックホルム水賞」を受賞した。