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《ラグビーW杯》“ジャッカル”姫野のぽっちゃり少年時代 中学恩師が「私も吹っ飛ばされた」驚異の体幹

source : 週刊文春デジタル

genre : エンタメ, スポーツ

恩師が姫野に贈った詩とは

 姫野の卒業が迫った頃、恩師はアメリカの哲学者ウィリアム・ジェームズの詩を彼に贈った。

「私も姫野の卒業と同時に学校が変わることが決まっていたこともあって、後にも先にも私の教員生活でこんなことをしたのは初めてでしたが、『今の姫野に足らないことがこれだから、読みなさい』と廊下で詩をプリントして手渡しました」

《心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる》

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中学3年の姫野。卒業アルバムに映る姿はたくましく成長している

「精神面が課題の姫野にぴったりだなと思っていました。最近、姫野に詩のことを聞いたら、『覚えてます。ありがとうございます』と言ってましたけど(笑)。そして、ラグビー部には『常に一流であれ』というチームスローガンがあったんです。ラグビーだけやっていてもダメ。ラグビー以外でも学校生活が大事で、姫野たちを指導するときには『それは常に一流か?』といつも言ってきました。今でも姫野がサインにその言葉を書いてくれてるみたいで、ありがたいです。ただ……今の姫野は一流を超えて、超一流ですね(笑)。素晴らしいです」

姫野が松浦先生に送った手紙(松浦氏提供)

 姫野らを指導する中で、恩師は自分の中である誓いを立てていたという。

「ラグビーって、めちゃくちゃ厳しかったり、根性を入れたりして教えるイメージがあると思うんですけど、それは止めようと心に誓っていました。とにかく、しごきは絶対にやらない、と。トライを取る喜びや相手を倒す充実感、そして楽しくラグビーをさせて、中学で嫌だと思ってほしくなかった。私は子どもたちが高校、大学、社会人でラグビーをする姿を見るのが夢でした。ですから、地元・豊田スタジアムで行われた先日のサモア戦で、桜ジャージを着てグラウンドを駆け巡る姫野を見たときは言葉がありませんでした。

中学生とは思えない体格で独走する姫野 ©清水良枝

 南アフリカ戦は姫野やチーム皆がだいぶ消耗していると思うんですよ。私も先日、心配になって『できるだけしっかり休めよ』と本人にメールを送りました。こんなこと言ってはいけないのかもしれないですが、心の中では『もうここまで来られたんだからいいじゃないか』という思いもあります。でも、皆の期待もあるから頑張らないといけないですよね」

修学旅行での姫野(左端、卒業アルバムより)

 10月20日、過去に優勝2回を誇る南アフリカとの一戦を迎える。恩師のラグビー部への誘いから始まった姫野の夢は、まだまだ終わらない。

《ラグビーW杯》“ジャッカル”姫野のぽっちゃり少年時代 中学恩師が「私も吹っ飛ばされた」驚異の体幹

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