「浅草のすき焼き店『ちんや』さんの霜降り肉はもう出さないという宣言、ほんまにその通りと思います。A5の霜降り肉なんてサシが過剰すぎて、胃にもたれちゃうから、店ではもちろん出しません。昔と違ってもう、霜降りの時代は終わったんじゃないですか」
と話すのは、予約が取れないことで有名な吉祥寺の赤身肉専門店「肉山」のオーナー、光山英明さん。現在はホルモン焼き店など55の飲食店経営に関与している光山さんだが、2月8日に配信された「老舗すき焼き店が『もう霜降り肉は出しません』」を支持するという。
そもそも、創業明治13年の老舗すき焼き店「ちんや」社長の住吉史彦さんが1月15日に自身のブログで、今後同店では霜降り肉を扱わないと宣言。文春オンラインの記事をきっかけに、ネットだけでなくテレビや新聞でも話題となった。同ブログで住吉社長は、A5ランクの一番霜降りの入った牛肉は扱わず、脂肪の融け方やサシの入り方のいいA4ランクを使用。今後はそれを「適サシ肉」と呼ぶことを宣言し、「適サシ肉」の商標登録を行っている。
「私は吉祥寺でホルモン焼きの店を10年間やって、2012年に肉山を開店したんです。『もうリブロースやサーロインのような脂の多い肉の時代じゃないだろう』と思ってのことですが、それでも本当に赤身肉だけで大丈夫かと思って、開店当初はコースの最後には脂がのっている肉も出していました。でも、お客さんが『これは美味しいけど、赤身のほうがいい』とおっしゃって、いつのまにか赤身肉だけしか焼かないようになりました」
現在、肉山で出している肉はA3ランクの肉が中心で、なかにはA2のものもあるという。
メディアはA5が一番美味しいように報じるが、そもそもA~Cや1~5というランクは、一頭から取れる牛肉の量やサシの入り方のランクで、味とは関係ない。
「私は3等級のほうが美味しいと思っているからお出ししているんです。そんなことをいうと『安いものを使ってるのか』と思われるかもしれませんが、いまは牛肉の価格が高騰し、3等級の肉と4、5等級の肉の価格差がほとんどなくなっています。だから、私にとって美味しい肉を選んだ結果がA3だったんだし、お客様も美味しいといってくださっています。もし、霜降りと赤身肉が同じ値段でもいまのお客様は赤身肉を選ぶと思いますよ。ちんやさんはA5の霜降り肉を使わないとおっしゃっていますが、ちんやさんが使ってらっしゃるA4ランクの肉を写真で見る限り、この霜降り具合で十分だとだれもが思うはず。A5が過剰なんです」
光山さんが現在、新しい業態として考えているのは、大阪ではポピュラーな野菜と牛肉を一緒に鍋で煮て食べる「ちりとり鍋」専門店だというが、そこでも牛肉は赤身肉を使うという。
「ちんやさんはA4だけじゃなく赤身肉のすき焼きも一緒に出してらっしゃるそうなので、ぜひ食べ比べをしてみたいと思います」