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日本が抱える「お金持ち“じゃない”人々」で広がる格差――NISA恒久化見送りから考える

実はアメリカ、中国に次ぐ「お金持ち大国」の日本

2019/10/28

 期限付きで導入された少額投資非課税制度(NISA)について、政府は10月16日に恒久化を見送る方針を固めました。現行制度は富裕層への優遇だという指摘もあって認めるのは難しいということです。果たしてNISAは富裕層優遇なのでしょうか?

アメリカ、中国に次ぐ「お金持ち大国」の日本

 まず、日本ではどれくらいのお金持ちがいるのでしょうか。世界的に見ると、日本は富裕層の数が多く、金融資産(※1)が100万ドル(約1億円)以上の富裕層世帯は1位アメリカ(約690万世帯)、2位中国(約360万世帯)に続く3位日本(約110万世帯)となっています(ボストンコンサルティング・グループの世界の家計金融資産に関する調査2015)。

 お金持ちの中でもレイヤーに分かれているのでその内訳を見ていきましょう。野村総合研究所(NRI)の調べ(2017年)によると、「純金融資産保有額(※2)」が、5億円以上の「超富裕層」が8.4万世帯、1億円以上5億円未満の「富裕層」が118.3万世帯、5000万円以上1億円未満の「準富裕層」が322.2万世帯、3000万円以上5000万円未満の「アッパーマス層」が720.3万世帯、3000万円未満の「マス層」が4203.1万世帯と、ピラミッドのような形になっています。

※1:金融資産とは一般に土地や家屋などの実物資産を除いた預貯金や有価証券などを指す。
※2:純金融資産保有額とは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いたもの。

 

 実際に家計を見ていると、アベノミクスの恩恵を受けて資産が倍増したアッパーマス層をよく見かけ、更にNISAなどの非課税優遇も大きいと感じます。これに対してマス層の中でも年収300万円未満で投資をする余裕のない層の数も非常に多いと感じます。

アッパーマス層以上とマス層の分断が進み続ける日本

 金融広報中央委員会が運営する「知るぽると」が2016年に調査した国民の金融資産(預貯金のほか、株式や投資信託などの金融商品)を見ると約3割が金融資産ゼロということが分かります。

 

 つまり、資産運用をする余裕のある家庭は税制優遇などでますます豊かになり、資産運用をする余裕のない家庭は税制優遇を活用することができていないのです。

 更に金融資産には不動産は含まれていませんが、アッパーマス層の多くは不動産を保有しています。都内のタワマンなども35年ローンを組めばなんとか手が届く層だからです。不動産に関してもアベノミクスの恩恵によって低金利で借り入れができ、含み益が出ている家庭も多いです。住宅ローン控除など税制の優遇を受けることもできます。

 このように、所得の差だけではなく、資産運用で差が出て、税制優遇でも差が出るとますます格差は開いていっているのです。また、格差は富裕層とそれ以外という二分化ではなく、アッパーマス層とマス層の間など小刻みに分断されているのです。例えば、スーパーなどでも超低価格のスーパーから高級スーパーまでかなりのレイヤーができました。