雲行きが怪しくなったのは、『アフター・アース』から
さらに『幸せのちから』(06)で、当時8歳の息子ジェイデンと親子役で共演する。幼い息子との路上生活から抜け出すために参加者20名から1名しか選ばれない証券ディーラーのトライアウトに挑む男を熱演、劇中での演技を超えた父子ぶりも相俟って2度目のアカデミー賞主演男優賞ノミネートに。今度は“パパ業もイケる俺様”がプラスされた。その後も『アイ・アム・レジェンド』(07)、『ハンコック』(08)をヒットさせ、『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督と再び組んだ感動ドラマ『7つの贈り物』(08)も当たったうえに世界の観客をおおいに泣かせた。
まさに頂点に立ったというべき彼の雲行きが怪しくなったのがジェイデンとの共演2作目『アフター・アース』(13)から。3072年の荒れ果てた地球に墜落したウィルとジェイデン父子がサバイバルを繰り広げるわけだが、見せつけられるのは映画撮影を通じた“思い出づくり”に励んでいるふたりの姿。こういう観客を無視したかのような演技を超えた父子ぶりは違うだろというわけで、思ったほどのヒットにはならず、批評面でも厳しい声が集中、魅力だったはずの“俺様”感が慢心にしか見えなくなってしまったのがなによりも痛々しかった。
『フォーカス』(15)では共演のマーゴット・ロビーのほうが目立ってしまい、『スーサイド・スクワッド』(16)でアメコミ映画に挑むもハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビーにまたしてもお株を奪われ、“それじゃ泣かせるか!”と意気込んだ『素晴らしきかな、人生』(16)ではウィル史上最低の興収を記録することに。この時、ウィルは48歳。モハメド・アリの名言のひとつ「50歳になっても20歳の頃と同じように世界を捉えている者は、人生の30年を無駄にしている」が頭をよぎったのかもしれない。