携帯電話でネット接続や音声通話をするには、街中にある基地局というアンテナに電波がつながる必要がある。しかし、すでに基地局を設置できるようなビルの屋上には既存3社が場所を確保しており、新規参入の楽天が用地交渉をするのは困難だといわれていた。
結局、楽天は計画通りに基地局を設置できずに、10月の商用サービス開始も遅らせざるを得なかった。三木谷浩史社長は「新しい技術を採用しているため、慎重に慎重を期す」と説明しているが、要は「見込みが甘かった」のだ。
この状況に、電波を割り当てた総務省もおかんむりの様子で、何度も行政指導を行っている。しかし、その総務省も安易に楽天に免許を与えた事自体、無責任だと言わざるを得ない。
かつて、日本にはイー・モバイルやウィルコム、ツーカーなど第4のキャリアといわれる存在の会社はいくつもあった。しかし、どの社も続かなかったのは、大規模な設備投資を必要とする携帯電話業界において、日本には大手3社がやっと生き残れる市場規模しか存在しないからだ。
しかも、既存3社はすでに20年以上、サービスを提供しており、全国津々浦々、隅々まで10~20万近い基地局でネットワークを構築している。しかし、楽天は2025年までに2万7000局程度の基地局を建設する計画でしかない。仮に2025年までに計画通りにネットワークを完成させたとしても、大手3社に見劣りするのは明らかなのだ。
どんなに安い通信料金プランだとしても「つながらない」のであれば、契約したいと思う人は皆無であろう。既存3社は、楽天のネットワークが3社と同等になって初めて、対抗する料金プランを打ち出してくる。それまで、既存3社は左うちわで楽天の動きを高みの見物しているはずだ。
楽天がこの先、苦労するのが目に見えているにも関わらず、免許を与えた総務省もあまりに無責任といえるだろう。
これでも大健闘している?
そんな楽天参入のプロセスを取材してきた一人としては、「無料プログラム」で明らかになった楽天のネットワークは「健闘している」と言いたいくらいだ。楽天の技術陣並びに工事を受注している会社はかなり頑張っている。
実は、楽天が現段階において自前でネットワークを構築しなくてはいけないのは、東京23区、名古屋市、大阪市。それ以外のエリアはauのネットワークにつながるようになっている。地下鉄や地下街、商業ビルやオフィスビル、主要ターミナル駅構内などもauのネットワークにつながる。他社の力を借りながらも、「圏外は多いけど、つながればなんとか使える」というレベルに到達しただけでも大健闘だ。