10月12日に日本へと上陸した台風19号は、各地に甚大な被害をもたらし、その影響から回復できていない地域もまだ多い。

 現在、そうした突発的な事態が起きた場合、人々の情報を支えるライフラインとなるのが「携帯電話」だ。だが、そのライフラインの信頼度は、値段や事業者によって大きく違う。日常では安価で十分な「格安スマホ」だが、災害時にライフラインとして生活を支えるのは難しい状況が見えてきた。

 台風19号被害への対応から、その価値を見直してみよう。

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台風19号の被害を受けた宮城県丸森町の避難所で充電される携帯電話 ©共同通信社

いざという時「つながりにくく」なる

 台風19号は比較的遅い速度で、東海地区から関東、東北へと移動していった。圧倒的な雨量による河川の氾濫の危険性もあり、早々に自宅から避難した人も多かった。

 そうなると、安否確認にも、情報確認にも、まず使うのは「スマホ」だ。他人とすぐつながれて、自分がいる場所に合わせた情報を即座に手に入れられる。筆者は幸い避難することもなく、大きな被害にも遭わなかったが、刻々と変わる雨雲の厚さや雨量をスマホからチェックできるのは、とても心強かった。

 だが、地域や人によっては、10月12日から13日にかけて、通信が遅くなったり滞ったりした場合があるという。普段よりも多くの人が使うので当然なのだが、問題はそうしたことが「格安SIM」などと呼ばれることの多い、MVNO(仮想移動体通信事業者)で多く発生していたことだ。決して深刻なものではなかったようだが、SNSなどで確認する限り、いくつかのMVNOで12日夜に「通信が遅くなった」人がいたようだ。それに対し、NTTドコモ・au(KDDI)・ソフトバンクといった大手3社では、そうした話はなかった。もちろん、すべてのMVNOで通信速度が落ちたわけではないし、場所によっても大きく異なる。

 このような状況が起きるのは当然だ。MVNOは、大手3社(MNO、移動体通信事業者と呼ばれる)から携帯電話回線を借り受け、自社ブランドで再販する事業だ。ユーザー数に合わせて借りる量を抑え、1人あたりの通信回線利用量をコントロールすることで低廉なサービスを提供している。そのため、急な通信量の増大には弱い。MVNOは日中や都市部などで「通信が遅い」と言われるが、それと同じ現象が起きる。日中ならば「安いからしょうがない」とも思えるが、災害時のライフラインだと考えた時、「通じづらい」ことを許容できるだろうか。