被災後の対応に大きな差が……
問題は「ちょっと通じづらい」だけに留まらない、ということだ。
現在は、大規模災害時の安否確認のために「災害用伝言板」が用意されるようになった。これらはあくまで「回線を持つ通信事業者」が用意するものであるため、MVNOは用意する義務を負わない。また、回線故障や大規模な通信量増大による障害も、「回線を持つ通信事業者」がまず告知するものなので、MVNOが前面にでることはない。
結果としてMVNOからは、「災害時でも災害状況や対策に関する告知など」がほとんど行われない。
被災して避難している人々にとっては、スマホが大きな支えになる。テレビなどを自由に見られるわけでもないし、昔と違い、ラジオを持ち込む人も減っている。避難所などでの情報収集はスマホに頼ることになる。そうすると、どうしてもデータ通信量が多くなる。
そのため大手事業者は、被災地域の契約者に対し、データ通信に関する制限をなくし、「安心してスマホに頼れる」態勢を作るようになっている。だが、MVNOにはそれがない、もしくは対策が遅れる場合が多い。
MVNOは規模の小さな事業者が多い。価格を下げるため、あらゆるコストを最適化している。だがその結果、災害時への対策はどうしても弱くなりがちだ。MVNOシェアトップ9社と大手MNO3社、準大手2社について、公式ページでのアナウンス状況を元に対応を表にしてみた。大手とMVNOでは対応がかなり異なり、MVNOの中でも対応はばらついている。
「ワイモバイル」「UQモバイル」は大手並み
ただし、どの「格安SIM」も災害対策が弱いか、というと、そうではない点に留意していただきたい。
ソフトバンク傘下の「ワイモバイル」やKDDI傘下の「UQモバイル」は、大手に準ずる災害対策を提供している。また、mineoやIIJmioなどは、毎回独自に、被災者対策を素早く展開している。ちなみに、この2社はMVNOの中でも、通信速度や技術対策の面で定評がある企業である。災害直後には対応できないものの、しばらく経ってから対応を発表する企業もある。
一方、最大手である楽天モバイルは、現状、他の企業も一般的に行っている「支払い期日の延長措置」以外の支援を打ち出していない。トップページについても、ごく小さくリンクが張られているだけで、大手事業者ほど目立たない。
一般に「楽天モバイル」として検索すると出てくるページはMVNO事業のもので、10月から試験的なサービスをしている、自社回線によるMNO事業の方は、他の大手3社と同様のトップページ構成になっていた。位置付けの違いはわかるが、なぜ利用者がより多く、ちゃんとお金をとるビジネスをしているMVNOの方で災害対策や告知を大規模に行わないのだろうか。今後MNOになると、現在の大手3社と同等の責任を負うことになるのだが、その覚悟は、まだ今の楽天モバイルからは見えてこない。