昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

2019/10/31

西山 感情が変わってからすぐに対局始まったんで、あっという間でした。重く考えず、フラットに『歴史の一番か』と思ったんですけど、後々、藤井先生ブームがきて凄まじいことになり、驚きました。

 実は、それまで藤井先生とは私の2勝0敗なんです。かなり前、関西奨励会のときに香落ちと平手で指しています。だから、周りに「相性がいいから」と豪語していたんですけど……。最終戦はボロ負けになってしまって。彼はおそらくソフトも取り入れていて、早指しでバンバンこられたんですよ。いままでの将棋と全然違って、成長スピードが速すぎました。

「三段リーグは、自分のあらゆる感情のピークを知れる場所」

――二段までは、いいところ取りで勝ち星の規定を満たせば、段級が上がります。三段リーグは半年かけて行われ、基本的に上位の2人しかプロになれない。同じ奨励会でも、心構えが違うのでしょうか。

西山 1日に2局指すのは有段になってから変わらないですけど、何もかも違います。三段だと、その日の1局目に負けたとき、次の対局はめちゃくちゃきついんですよ。もうひとつ負けたら終わりだと思うから。三段リーグはどこかで連敗すると上がれなくなるんで、1局目に負けた後のメンタルの保ち方は、三段全員の課題だと思います。二段だったら、極端にいえば「次は研究課題の将棋を1局指して、次回から頑張ろう」と思えるんですけど、三段リーグは全部、自信のある戦型を指さないといけないです。

 

――それだと、自分も相手も気迫が違うんでしょうね。

西山 元三段の石川泰さんが「三段リーグは、自分のあらゆる感情のピークを知れる場所」といっていて、その表現がぴったりだと思いました。極限の状態の自分を知るって、逆にいえば極限状態のみんなを見ちゃうんですよ。全員が必死で、二段以下じゃありえないような気合いの入れ方です。

――西山さん自身、過呼吸になって指したこともあるそうですね。

西山 三段になる一番と、三段リーグでの一番ですね。あれは過呼吸でした。全部なくなっちゃう恐怖があるんで、私も含めて、みんな苦しんでやっていると思います。

――三段リーグでは、里見香奈三段とも再戦しています。

西山 三段リーグは全局、特別な思い入れがあります。里見戦も同じように指しました。

 

――奨励会員で三段リーグ、公式戦、タイトル戦を経験しているのは、里見さんと西山さんだけです。対局の舞台が違うと、将棋に臨む心構えも変わってきますか。

西山 三段リーグは突き詰めてやるんですけど、公式戦や女流棋戦はよい意味で、伸び伸びと指している気がします。三段リーグでもやるようにしているんですけど、手が引いちゃうときもあるので……。

――伸び伸びと指せるのは、でかいですよね。

西山 でかいです。伸び伸びと指すと、視野が狭くならないので、形勢判断が割とちゃんとできる気がします。三段リーグだと、盤面全体を広く見たときに、局所的な攻防に固執しすぎていたということもありますし。プレッシャーも、あとで見たら関係しているのかなと思いますね。

(全4回/#3へ続く)

写真=佐藤亘/文藝春秋

にしやま・ともか/1995年6月27日生まれ、大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2010年、6級で奨励会入会。2015年、三段。
女流棋戦のタイトル戦登場は5回。2018年、第11期マイナビ女子オープンで初タイトル「女王」を獲得。2019年、第12期マイナビ女子オープンで里見香奈女流四冠の挑戦を退け、防衛を果たした。
得意戦法は振り飛車で、豪快なさばきが持ち味。

この記事の写真(6枚)

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春将棋をフォロー