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「もう将棋は嫌だ!」小4で道場をやめた“西山朋佳少女”が里見香奈六冠と初めて戦った日

「もう将棋は嫌だ!」小4で道場をやめた“西山朋佳少女”が里見香奈六冠と初めて戦った日

西山朋佳女王インタビュー #1

2019/10/31
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 将棋で「女王」といえば、7つある女流タイトルのひとつを意味する。保持するのは西山朋佳。彼女は現役奨励会三段で唯一の女性で、また慶応大SFCに在籍する才女だ(現在は休学中)。

 西山女王は秋に開幕した第41期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負、第9期リコー杯女流王座戦五番勝負に挑戦中で、里見香奈女流六冠(清麗・女流王座・女流名人・女流王位・女流王将・倉敷藤花)と「八番勝負」を戦っている。里見のタイトル獲得・防衛の勝率は8割6分あるものの、西山には今年春の第12期マイナビ女子オープン五番勝負で敗退した。もし里見が女王を奪取していれば、今年9月に成し遂げた史上初の女流六冠は、七冠独占になっていた。

 八番勝負は折り返し点を迎え、女流王将戦は最終局の第3局が11月1日に行われる。女流王座戦は今月30日に開幕し、西山が制した。

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 西山女王は藤井聡太現七段と同時期に三段リーグに初参加し、最終戦で藤井三段の四段昇段を懸けて戦った。彼女の将棋の向き合い方を読み解けば、女流棋界の覇権争いの厳しさ、将棋ソフトの研究が当たり前になった奨励会員の素顔が明らかになるはずだ。

(全4回の1回目/#2#3#4も公開中)

西山朋佳女王

◆ ◆ ◆

「姉妹で同じ習い事はさせない」

――将棋を覚えたきっかけを教えて下さい。

西山 小学1年生のとき、父と姉が将棋を指しているのを見て、興味を持ったらしいです。ふたりともルールをかじっているぐらいでしたが、私は楽しくて。大阪狭山市は将棋が盛んで、駅前の会館で将棋教室が週3回行われていて、通うようになりました。同じ小学校の先輩で、3学年上の谷口由紀(女流二段)さんとお姉さんがいて、ほかにも女の子がいたから、男の子が多くても浮くようなことはなかったです。

――お姉さんの静佳さん(現囲碁棋士)は通わなかったんですか?

西山 姉は将棋をやらなくて、ピアノやバレエ、水泳とか、色々な習いごとをやっていたんですよね。あと私も姉にならって塾にいったこともありましたが、プリントの上でよだれをたらして寝ていたから辞めさせたと聞きました(笑)。そういうのもあって、私はずっと将棋一本になったんです。

――静佳さん、将棋はやらなくても、囲碁はハマったんですね。

西山 姉が小学5年生のとき、『ヒカルの碁』の大ブームがきて、それで熱中したんですよ。あと、うちの母は「姉妹で同じ習い事はさせない。下のほうが伸びるから、上の子どもにとってあまりよくない」と思っていたそうです。

 

「嫌だ!」小4の頃、道場通いをやめた

――将棋はどうやって伸びていきましたか。

西山 教室はまず矢倉戦法を覚える方針だったから、いまでも信じられないんですけど、居飛車をやっていたみたいです。小学2年生でアマ初段になり、それから土日に関西将棋会館の道場に通うようになりました。

 大会もよく出ていました。小学生から大学生が出場する、学校別の5人団体戦に谷口さんと出たのを覚えています。有名大が多数出場するなか20位ぐらいになってうれしかったです。小学校4年でアマ三段になったんですけど、その頃に道場通いをやめたんですよね。というのも、将棋を2、3局指したら外の公園で遊んでいたことを知人が母にいってしまったからなんですけど。