現役奨励会三段で唯一の女性、西山朋佳女王。インタビュー3回目は三段リーグでの戦い方、里見香奈女流六冠とのタイトル戦について聞いた。(全4回の3回目/#1、#2、#4も公開中)
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トップ棋士には「あらゆる将棋で負ける」
――関東に来てから、研究会(実際に集まって練習将棋を指す)を始めたと聞きました。
西山 関西は地方からくる人が多いからか、ネット将棋ばっかりの人がたくさんいました。でも関東だと少数派で、ほとんどの人が研究会をやっているイメージです。だから、いまギャップに困るんですよね。自分は『将棋倶楽部24』(ネット将棋の対戦サイト)ばっかりやっていましたけど、いまは棋士の棋譜を見て、棋風を知っておかないといけないですから。
研究会は段級の近い奨励会員同士で始めて、そのうち色々なところにお呼びいただいて、棋士の先生にも教わりました。
――ネット将棋と研究会、何が違うんでしょうか。
西山 ネット将棋より、研究会のほうが実際の対局に近いですね。相手の息遣いや雰囲気で、色々と考えるんですよ。例えば、ネット対局だと自分の意見しかわからないから、自分が「優勢」だと思ったら「優勢」でいいんです。でも、盤で向かい合うと、自分がいいなと思っても、相手の表情や様子で向こうも自信ありそうなのがわかるんですよ。そのときにどう気を強く持つかは難しい。その技術は教えてもらうというよりも、相手から吸収する、盗む感じですね。
――奨励会員同士の研究会と棋士に教わるのは、どう違いますか。
西山 棋士の先生には、2年前ぐらいから定期的に教わるようになりました。力が違い過ぎるので、ひたすらボコボコにされるときもしょっちゅうあるんです。そのあとに三段と指すと、自分たちはまだまだ伸びしろがあるんだなと思います。
――そんなに違うんですか。
西山 教わる相手がトップ棋士だと、あらゆる将棋を負けるんですよ。序盤の勉強量が違うので、駒組みのスキを突かれてボコボコにされますし、こちらの序盤がうまくいっても勝負術がたくさんとんできて逆転負けします。これが歴戦の一手だなと感じることが多いです。
――『24』だと、基本的にレーティングの近いユーザー同士で指すから、圧倒的に棋力が上の人に教わることができるのも、研究会ならではといえそうですね。
西山 そうですね。
――研究会を重ねるにつれて、実際の対局でも時間を使うようになったと聞きました。
西山 まだまだ考えていない手が大量にあったんだと気づいたんですよね。いま思えば、早指しだったのは、読めていなかったんですよ。相手にやられたら嫌な手が見えないとだめなんです。