トップ棋士の先生はまず体を鍛えている
――心のスタミナも関係あるんでしょうか。
西山 ええ、ちょっと形勢が悪いと思っているひとのほうが勝ったりするので。対局中に自信を持ち過ぎて、変に傲慢になってもいけないんでしょうけど。
――スタミナって、どうやってつけるんでしょうね。
西山 トップ棋士の先生は、まずみなさん体を鍛えている感じがしますね。めっちゃ体力をつけているんだなと気づくことが多いです。
――脳や思考力だと、スタミナの意味はまた違いそうですね。
西山 丸山(忠久九段)先生のおっしゃる「読みの筋肉」なんでしょうか。あの言葉、みんなしっくりきていますよ。普段からしっかり読んで読んで読んでという習慣をつけているから、土壇場になっても力を出せるということなんでしょうけど、いまの自分の力では実感できていないので、よくわからないです。
「洋服も困らないように10着ぐらい一気に買った」
――2018年、第11期マイナビ女子オープンで加藤桃子女王に挑戦します。2014年以来、2回目のタイトル戦です。前回とは臨み方は変わったのでしょうか。
西山 4年前の後悔を徹底的に思い出して、改善して挑みました。何もかも緩かったんですよね。前夜祭の服装も、前は日程が近くなってからアワアワしながら買いにいったんですけど、今回は10着ぐらい一気に買って、もう絶対に困らないようにしました。スピーチもちゃんと練習して、盤外のことで気が散らないようにしましたし。あと、相手の対策を立てようと思って、相手の棋譜を見るようにしました。
――え、前は見てなかったんですか?
西山 ええ、見てなかったです。奨励会と同様に、ネット将棋をやっているから、それでいけるだろうと思って。あとは暑がりなので、そこも対策して、どうしようと思うことがないように全部予習するようにしました。
――シリーズは第1局に負けて、その後に3連勝で奪取となりました。
西山 準備したおかげで、突然負けになる将棋は減ったかなと思います。1局目に負けてしまったのは勉強不足でしたが、2局目以降は指し慣れた将棋になり、伸び伸び指せました。
――タイトルを獲って、何が変わりましたか。
西山 中2の3月に奨励会に入会してから、いままで階級がひとつずつ上がるぐらいしか成果がなかったので、初めて大きな結果を出せて認めてもらったのかなと思いました。師匠は、私が高校生のときからタイトルを獲れるんじゃないかと評価してくださっていたから、遅くなってしまったんですけど。でも、たくさんお祝いしてくださいました。
――女流のタイトル保持者枠で、棋士の棋戦に出場するようになりました。
西山 注目してもらえると考えると、恥ずかしい将棋は指せないので、色々と用意して挑むようになりました。大きな成長の機会にさせてもらっています。