――一方で、それが見えたら、将棋を指すのが怖くなりそうです。
西山 この手が嫌だなと思っていると、実際に指されることも多いんですよ。そのときに精神にきますよね。
――そうやって戦い方を変えると、心身の疲れが違ってきそうです。
西山 熱戦だったなと思うことが増えましたね。考えることが増えたからでしょうか。
ほかの三段と違って対策を立てられやすいのでは?
――棋戦に出場する西山さんの将棋は中継されるので、ほかの三段と違って情報を集められやすいです。対策を立てられやすいことは気にしますか。
西山 私は力将棋にするようにしていますし、たくさんレパートリーを作るようにしているので、あまり心配していないです。それに、ある形で快勝したりすると、相手が怖がって避けてくるときも多いんですよ。その辺りは一長一短かなという感じです。
――逆に、まったく交流がない三段の情報はどうやって集めますか。
西山 奨励会員には必ず師匠がいて、その同門の人がいるので、その人に聞いたりします。「王道タイプで筋のよい手を指してくるけど、筋の悪い手を指さないのが欠点だよ」とか、参考になりますね。
――それを知っていると、プラスとマイナスの両方がありそうですね。相手の癖が分かると戦いやすいけど、逆にその人らしい一手が出ると持ち味が発揮されたように感じて、必要以上に大きく見えてしまうときもあるんじゃないですか。
西山 いやー、そうなんですよ。駆け引きというか、情報を取り入れすぎるのもだめなんです。
最近は感想戦でも「ソフト」という単語さえ聞かない
――将棋ソフトは使っていますか。
西山 普通の人より少ないです。どうしても分からなくなったら調べますけど。
――「三段リーグは流行のサイクルが速い」と聞いたことがあるので、ソフトを使っている人は多そうですけどね。
西山 真っ二つに分かれる気がしますけど、バリバリに使っている人はいないんじゃないでしょうか。仮によく使っていても、どこかで壁を感じてやめるひとが多いと思います。最近は感想戦でも「ソフト」という単語さえ聞かない気がしますよ。三段リーグはそういうのじゃないというか、点数がプレッシャーになってくるんですよ。事前の研究通りに進んで300点よしと知っていても、思考が緩んじゃいますし。あとで調べたら、プラス1000からすぐにマイナス2000とか、一瞬で点数はひっくり返るんで、あてにしちゃいけないと思います。
――いくらよくなっても、勝ちきらないと意味ないですもんね。
西山 そうです、そうです。勝ちきる手が必要なんです。