タイトル戦前日に大学のレポートを書いていた
――私は開幕局に同行しましたけど、対局検分のときに「何したらいいんですか」と戸惑っていましたもんね。このシリーズは西山さんの3連敗、ストレート負けでした。
西山 あっという間でした。そのときは大学も通っていたので、レポートやテストがあったんです。対局前日にレポートを書いていたこともあったんですよ(笑)。人生でいちばん忙しかったです。あと、私は対局相手との距離もわかっていなくて、加藤さんに馴れ馴れしく話しかけて、雑談していたんですよね。
――食事とおやつを対局前日に選ぶとき、「どれにする?」って仲よく相談していましたね。
西山 対局に向かう意識として、だめだったと思うんです。でも、あれはいい経験でした。たくさん学びがあって、ストレート負けで、あっさり。あれは負けるべくして負けたんだなと。
「最終戦が藤井三段、これは絶対にやばい一番になる」
――翌年の夏に休学し、12月に三段に昇段されます。
西山 リコー杯の経験から、将棋と大学の両立はだめだろうと思ったので、休学しました。ボロ負けしたのはいい分岐点で、時間ができたのは大きかったと思います。
――奨励会三段リーグは、二段までの例会と空気や雰囲気が違うんでしょうか。
西山 奨励会自体がピリピリしているので変わらないと思ったんですけど、違いました。まず、私が入ったときは藤井(聡太現七段)三段がいて。彼は上がるオーラが全開で、有力な昇段候補のひとりだと見ていました。そして、リーグ表を確認したら、最終戦が藤井三段。「これは絶対にやばい一番になるな」と思いましたもん。
――実際に、2016年9月3日は藤井三段の昇段を懸けた一番になりました。
西山 いやー、なりましたね。競争相手が昇段レースにのっているんだと思っていたら、みんな負けていて。藤井三段が自力の目が残ったのを知ったのが、対局開始5分前ぐらいだったんです。
――三段リーグ最終日は、まず午前中に大橋貴洸三段(現六段)が昇段を決めたんですよね。最終日を首位で迎えた藤井三段は、午前中の対局に負けて自力が消滅したかと思いきや、競争相手の2人も負けていた。だから、勝てば昇段という奇跡的な状況で、西山戦を迎えることができたんです。