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チュートリアル徳井が申告漏れ 金融のプロが答える「これってどうなの?」4つの問題点

番組降板も決定……続く波紋を解説

2019/11/01
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その2)なぜ決算が複雑なのに法人を作ったの?

 会社員だったら源泉徴収されるのに、なぜ決算が複雑になる法人を作るのでしょうか? 節税のために法人を作る場合も多いようです。

 所得税は累進課税で課税所得金額が4000万円超の場合、45%の所得税が課せられます。これに加えて住民税が10%なので合わせて55%の税率になります。また、会社員の場合、給与所得控除など経費となる部分が少ないです。

 

 これに対して法人を作ると、法人税の実効税率は30%前後と下がります。加えて自宅もオフィスにしているのであれば一定面積までは経費にできるなど売上から経費を引くことができます。会社員の場合、手取りから家賃を支払わなければならないので大きな違いになります。また、法人で経費となる役員報酬も株主が一人だけの会社であれば原則的に自分で金額を決められます。所得税があまりかからない金額にして、医療費控除などの控除をたくさん使う人もいるようです。

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 一般企業の場合、会社員としてではなく、法人や個人事業主として雇用契約をしてくれる会社は少ないですが、芸能事務所などの場合は融通が利くのでしょう。社会通念の範囲内で節税をして、きちんと税務処理を行っているのであれば通常は節税の範囲で収まります。売れている芸能人なども法人にしていることは多いです。

その3)「申告漏れ」に刑事処分はないの?

 しかし、数年間に及んで法人税も個人の所得税も申告をしていなかったために、無申告加算税、延滞税に加え、重加算税が課せられた可能性が高いのです。また、売り上げを隠すなどの悪質な脱税行為だと最大で10年以下の懲役や1000万以下の罰金もしくは併科となることもあります。

 今年2月12日、約1億8000万円を脱税したとして、法人税法違反などの疑いで東京地検特捜部に逮捕された“青汁王子”こと株式会社メディアハーツ前社長の三崎優太氏(30)の場合、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けています。記者会見で徳井さんは「想像を絶するルーズさ」が原因だったと話していましたが、こちらはあくまで「申告漏れ」。一方、三崎氏は悪意がある「脱税」と判断されての刑事処分と考えられそうです。

 日本国憲法第30条にも「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」という規定があります。つまり、たとえ悪意がなかったとしても、納税義務を果たしていないということは非常に深刻な問題なのです。知らなかったでは済まされないのです。

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