テストマッチと本チャンではこんなに違うか、とテレビ見ながら感心してしまったラグビーワールドカップ(以下WC)。ゲームじゃなくて中継番組が。
日本対南アのテストマッチについては9月26日号の当欄で書いたように「試合前やハーフタイムに芸能人が投入されたものの、それほどうるさくなくスポーツ中継の本分を守っていた」のが意外だったが、とにかく試合そのものがペラペラに感じてしまうような中継だった。その時は、試合内容がしょっぱいからそうなったと思ってたが。
ついにWCが始まると、選手が入場してくる時に黒装束の若者が和太鼓叩くという、どっかの代理店に押しつけられたような演出があり、キックオフで鼓打つ時の「イヨォ~ッ!」みたいな声が入るとか、「そういうことだけはやめとけ」と思ったことがきっちり行われててガックリきたものの、試合そのものはテストマッチとは到底比べものにならない。たとえ日本と関係ないワンサイドゲームであってもテレビで見てるだけで厚みが違った。今までWCはすべて海外の試合を見てたわけで、「ラグビーが国技みたいな国でやってるWC」だからあんなにグラウンドも客席もぶ厚い熱気が覆ってるんだろうと思ってたのだが、驚いたことに、ラグビーが現在イケてるとも思えない日本で「ちゃんとぶ厚かった(和太鼓以外)」。いくら日本のテレビ局でも、いつものバラエティノリでおもちゃにするのは躊躇(ためら)われるぐらいデカいイベントだったということか、それとも「ラグビーだからこの程度で済んだ」のか、どちらにせよ、よかった。
日本が予想外の善戦で予選突破するという想像もできない事態。これも中継が破壊されるほどの大騒ぎになるんじゃないかと思ったが、恐れていたほどではなかった。かわりにワイドショーが「いかなる日本代表でも勝つとこれしかやることないのかよ」という「騒いでいる人を映す」をやり続けるのでゲンナリしたが、決勝トーナメントは南アに完敗。
同じ日に日本テレビ系で「フランス対ウェールズ」があって、この中継が良かったんですよ。落ち着いて、かつ緊張感にあふれ、しかし淡々と、ラグビーの面白さをまったく浮つかずに視聴者に見せてくれたと思う。ハデさはないが、スポーツ中継は本来こうであってほしいという静けさがあった。「日本が出てないからそうなった」だけかもしれないが、このあと日本はもう出てこない。浮かれてへんなことする必要も何もない。すばらしい決勝の中継をしてくれー。とにかく「この日本でやるワールドカップ決勝!」とか意識しないで淡々とやってほしい。できれば和太鼓もそっとひっこめててくれないものか。
『ラグビーワールドカップ2019 日本vs. 南アフリカ〈準々決勝〉』
NHK総合 10/20放送
https://www.rugbyworldcup.com/