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正当防衛を主張する傷害致死事件の被告人の「強力助っ人」

僕が傍聴した中での最高峰は、いまから6年ほど前に傍聴した傷害致死事件。裁判員裁判で行われ、審理の日数は4日間だった。事件の概略は以下のようなものだ。

<自転車でコンビニに向かっていた被告人が、酒に酔った被害者に絡まれた。いったんは別れるが、自宅に戻った被告人が忘れものに気づき、再びコンビニへ。すると再び被害者ともみあいになった。被告人に殴られ地面で後頭部を打った被害者(持病のため出血しやすく止血しにくい傾向があったと後でわかった)は、救急車で運ばれたものの翌朝死亡。争点は、被告人の暴行態様。被告人の暴行と被害者の死亡との間に因果関係が認められるか否か。正当防衛が成立するか否か>

被告人の主張は正当防衛で、被害者を殴ったことは認めている。裁判で正当防衛が認められることはまれだ。しかも、今回は事件の目撃者が証人として呼ばれているとなれば、勝ち目は薄いと思われた。

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では、どうするか。

弁護士「被告人の運命はみなさんの掌の中にあります」

裁判員の先入観(捕まったのだから有罪だろう)を取り除き、暴力がやむにやまれぬものであり、酔っ払いの被害者の行動には疑問符が付くという事件全体のストーリーに共感してもらうしかない。

放ったパンチ1発が致命傷となったのは、被害者は飲むべきではない酒をたくさん摂取していたからであり、医者から酒をやめるよう注意されていたこと、酒が原因で妻と離婚したことなどが背景にあるのだと被告人は主張した。

弁護人は本来、原告側に圧倒的有利に働くはずの目撃者証言にも鋭く切り込んだ。みずから現場検証をして、目撃したとされる位置からは、もみ合った場所が見えないことを証明したのだ。

苦しくなった検察が、被告人の過去(暴走族だった)をネチネチほじくり返すと、弁護人は「異議あり」と激怒し、今回の事件と何の関係もないことを裁判員に印象付けた。

そして検察の求刑5年を受けての最終弁論で、弁護人は驚異のパフォーマンスを披露する。