「男同士なんておかしい!」がない、優しい世界はそのままに
『イン・ザ・スカイ』の第1話を観てまず思ったのは「あの優しい世界はしっかり引き継がれている」ということ。16年の単発ドラマでは「男性が男性に恋すること」に、周囲の人間たちが100%肯定的でない描写もあったが、18年の連続ドラマでは登場人物の誰もがそのことに疑問を抱かず、春田の幼なじみ・ちず(内田理央)はもちろん、武蔵の妻・蝶子(大塚寧々)でさえ夫の恋を受け容れ、最終的には離婚までして彼らを応援するという展開に。
『イン・ザ・スカイ』でもその優しい世界観はそのまま共有されており、自分が想う男性と成瀬との関係を問い詰めようと鼻息荒く乗りこんできた女性ですら「男同士なんておかしい!」などとは決して叫ばない。また、全体的にコメディー色も強く、特にラスト3分間はグレートキャプテン武蔵の身もだえ乙女苦悩、シノさんの雄たけび、成瀬のドS網ドン、ひたすらうろたえる春田と、メイン4人からフルスロットルな演技が繰り出され、ボルテージは最高潮に。
その凄まじいエネルギー量を受け『イン・ザ・スカイ』はドラマの放送中、Twitterの国内トレンドで1位、放送終了直後には世界トレンド3位を獲得。視聴率もテレビ朝日・土曜ナイトドラマの枠では過去最高の5.8%を記録し、ザ・テレビジョンが独自の集計でデータ化している視聴熱では日々上位に名を連ねる。
と、全体的に追い風モードの『おっさんずラブ-in the sky-』だが、この状況をすべて好意的には受け容れられない視聴者もいる。
「人が人をピュアに愛すること」を体現した“牧春”はどこ?
そう、18年の連続ドラマ『おっさんずラブ』で牧と春田の純愛に心を持って行かれた人々……通称“牧春民”である。
さまざまな紆余曲折を乗り越え、涙でボロボロになりながら「人が人をピュアに愛すること」を体現した牧と春田に気持ちを寄せ、胸の苦しみと戦いながら応援し続けてきた“牧春民”にとって、牧がいない新作は「パラレルワールドとして観て欲しい」と言われても簡単には納得できない事態。SNSで怒りや哀しみの声をあげたり、『イン・ザ・スカイ』に対し「これは私たちが待っていたおっさんずラブじゃない!」と、前作&“牧春”への愛の強さに裏打ちされた感想をつぶやいてしまうのも必然かもしれない。
『おっさんずラブ』の“牧春”に限らず、ヒットドラマにおいて“カップル萌え”“カップル推し”現象はまま起きる。