2年半ものあいだ雨が降り続け、3分の1が水没した東京。レインボーブリッジも水に沈み、高層ビルの上部だけが海面に散らばったブロックのように顔を出している。
新海誠監督の映画『天気の子』の衝撃的なラストシーンだ。
「東京のあの辺はさ、もともとは海だったんだよ。ほんのすこし前――江戸時代くらいまではね」と、ある登場人物は懐かしむように語るのだ――。
注意すべきなのは「江東5区」
「しかし、これは映画の中だけの話とは言えません。まさに映画『天気の子』が描いているような“東京沈没”が現実化していたかもしれないのです」
そう警鐘を鳴らすのは、長年、江戸川区の土木部長として、下水道や河川事業に従事してきた土屋信行氏だ。
10月12日、13日にかけて本州に上陸し、甚大な被害をもたらした台風19号。全国で、死者89人、行方不明者7人(11月2日時点)にのぼり、また、氾濫した河川は、延べ71本となった。都内でも豪雨が続き、浸水被害に見舞われた。
「ところが、もっと恐ろしい事態も起こり得たのです。河川やダムの状況を細かく検証すると、実は危機が目前に迫っていたことが分かります」(土屋氏)
土屋氏によると、特に注意すべき地区は、“下町”と言われる東京東部の「江東5区」、墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区だという。「その地域の水源は、関東の山岳部にあって、そこに降った雨も、最終的にはこの地域に流れてくることになる」からだ。