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「今日はいいBLを見つけてやるぜ……」売春で稼いだ1万円を握り締めて本屋に向かった日

2019/11/18
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 当時のあたいは家へ4万円(高校2年生以降は5万円)入れなければならず、さらに携帯代の支払いも自身で行っていたから、貯金にも遊びにもほぼお金を回せていなかった。

 やっぱりそりゃ辛かったわ。あたいだって食費なんて気にせず本も買いたいし、バイト先の友達と遊びたい。それにいつか家を出る為のお金を貯めたいって思ってた。母ちゃんと離れて暮らしたかったから。

 母子家庭の子どもが抱くには悲しい理由だと思うけど、それが当時のあたいのがんばれる理由の源泉となってたわ。

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 なんとか貯金を作ろう。そう思ってあたいは携帯電話でインターネットに接続し、ゲイの売春掲示板を利用するようになった(この業界では売春をサポ、正式名はサポートという隠語で呼ぶ)。

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 そしてあたいは高校1年生にして、オトコを知った。好きでもない大人に初めて抱かれた。

 この話はまた後に書くわね。

 その日は駅前の本屋に来ていた。売春で稼いだ1万円を握り締めて。

前日のその行為でふさぎ込んでいた心のモヤモヤを振り払うため、そして気持ちを落ち着かせる為に――BLコミックを買いに来たのだ(これが高校時代の年2回ほどの贅沢だった。テヘへ)。

 BL――それが指すのはボーイズラブ、つまり男性同士の恋愛モノの作品全般のこと。

 本がもともと好きで、できる限り図書室の本を借りて読むようにしていたけど、もちろんBLコミックなんてものは学校の図書室には無い。

 高校入学と同時に図書室に駆け込み、中学の時とは違うその大きな規模に期待しながら血眼でBLモノがあるかを調べたけど、普通に無くて膝から崩れ落ちたのが2ヶ月前のことだった。

「今日はいいBLを見つけてやるぜ……」

 溜まりきったフラストレーションを発散するためにも、あたいは意気込んで、本屋に足を踏み入れた。

父は自殺、母は毒親――。ゲイの男の子が過酷な家庭環境でも生き抜いてきたこられたのは、かけがえのない出会いと愛があったから。おせっかいでも人の悩みを聞いて、一緒に考え、腐らずに立ち向かってみる、そんな「ゲイ風俗のもちぎさん」のルーツが明かされる初の自伝エッセイ『あたいと他の愛』が現在発売中です。もちぎさんの心に刻まれた14歳の初恋。

あたいと他の愛

もちぎ

文藝春秋

2019年11月14日 発売

「今日はいいBLを見つけてやるぜ……」売春で稼いだ1万円を握り締めて本屋に向かった日

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