これはある会社の話だ。この会社では自らの事業領域とは全く異なる分野のプロジェクトを手掛けることになり、組織に知見がないのでコンサルタント会社に事業の企画立案を委託した。プロジェクトは国内初のプロジェクトであったために難儀を極めたものの、コンサルタント会社の作る資料や提案をよく吟味しながらすすめたことで、無事成功を収めることができたという。藪漕ぎはすべてコンサルタント会社に任せることで道が開けたのだ。
さて、同じ領域でのネクストプロジェクト。この会社ではすでに成功事例となったので、上層部からも早く次の案件を手がけろとの熱い期待が寄せられる。そこで担当するエリート君は「もはやこの分野での藪漕ぎはいらない。前回ですべてわかったので自分たちでできる」との確信から自信満々にプロジェクトの企画を開始。件のコンサルタント会社にはマーケット調査のみを依頼し、そこから出てきた数値で企画を作り上げることにしたのだ。
コンサルタント会社を怒鳴りつけた“エリート君”
ところがコンサルタント会社のマーケットデータは極めて厳しいもので、企画自体を見直したほうが良いという代物だった。しかし、もはや「成功」の文字しか頭にないエリート君はこの数値に激怒したという。
「なんなんだ! こんな数値を出してきやがって。お前はウチが何をやろうとしているのかわかってんだろ! こんな数値では上司に説明できない、全部やり直せ!」と怒鳴ったそうだ。
コンサルタント会社は数値のねつ造はできないと主張したところ、この会社から「お出入り禁止」をくらったそうだ。プロジェクトの行く末は誰の目にも明らかだ。
藪漕ぎをすることの意味を理解せずに、自らの会社のヒエラルキーと「ムラの論理」だけで仕事をする会社に持続可能な本当の意味での「未来事業」は存在しないのだ。