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【韓国慰安婦訴訟】徴用工以上に厄介な「司法の暴走」を文在寅は止められるのか

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 国際

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 日本政府はこれまで、今回の裁判の訴状の受け取りを拒否していた。ところが、ソウル中央地裁は今年3月になって、裁判所などに訴状内容を掲示することで被告に訴状が届いたとみなす「公示送達」の手続きに着手。日本政府は5月、韓国政府に「却下されねばならない」との見解を伝え、裁判を受けることを認めないとの立場を発表した。

 ご存じの通り、慰安婦問題は2015年12月に、朴槿恵前政権の韓国と日本が「完全かつ不可逆的に解決することを確認」し、日韓両政府が合意したはずだった。日本政府はこの日韓合意に基づき、10億円の資金を拠出し、韓国側で設立された「和解・癒やし財団」を通じて、合意時点で生存していた元慰安婦の7割以上に現金が支給されている。

 ところが、2017年5月に就任した文在寅大統領は、「(日韓)合意で問題が解決されたということは受け入れない」との立場を取り、18年11月にこの財団の解散方針を発表。今年7月上旬に解散が確認された。

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ソウルの日本大使館前の慰安婦像 ©文藝春秋

 今回の慰安婦訴訟は、日韓合意の1年後に提訴されている。 文在寅政権の韓国政府が慰安婦問題を蒸し返し、日韓合意の精神を否定する直前から動き始めていた。その訴訟が、今になって動き出したのだ。

 元慰安婦ら原告側は、日韓合意について、「合意では日本政府が法的責任を認めていない。日本政府の法的責任や被害者の賠償請求権に触れないまま政治的に妥結されたものだ」と批判し続けている。元慰安婦の7割以上が日本からの拠出金を受け取っていても、合意はなかったに等しいというのが韓国での風潮だ。

韓国法曹界からも疑問の声

 この慰安婦訴訟については、3年前の提訴当時から対日関係への悪影響を危惧する見方があった。

 日本政府が法廷欠席の根拠とする国際法上の「主権免除の原則」を韓国当局も当然、把握していたはずだ。にもかかわらず、地裁は10月、口頭弁論の期限を11月13日に指定し、裁判の開始を認めてしまった。

 実は韓国でも裁判開始の判断は一部で波紋を広げている。