1ページ目から読む
2/3ページ目

「つぎ教室移動?  1階まで一緒に行こうぜ、靴箱に教科書置きっぱなしなんだよ俺」

エイジは屈託の無い笑顔でそう言った。あたいは頷いた。

「靴箱に置き勉とかやり始めたん? エイジも悪なったな~。どうせ遊んでばっかやろ? また赤点とるで」

ADVERTISEMENT

 そうあたいが言うと、エイジは誤魔化すように頭をかいた。

 2人で廊下を歩いて、校舎の1階中央にまで降りて行く。あたいは大学には行かないものの、授業はまじめに受けていたし、この頃には成績もある程度取れるようになってた。けれど反対に彼は、まあまあ適当な高校生活になってきていたようだった。制服の着こなしもだらしなくなっていたのを覚えてる。いわゆる2年生の中だるみってやつだ。

 当時、遊んでる同学年の子達は校内でカップルになったり、化粧や髪のセットに精を出したりしていたし、中には他校の子と合コンまがいのことをするグループもいた。けどうちの高校では問題行動するような人間は少なかったし、偏差値もそこそこ高く自由な校風だったので、わりとみんなのびのびと青春を謳歌していたわ。ちなみにあたいは高校にタイプの教師もいなかったし、青春諦め系男子と化してた。

『あたいと他の愛』【子どもと呪い】を読む

 あたいが中学の時には(周りに遊ぶようなところが無かったからってのもあるけど)そういう遊楽にふける子は少なかったので、あたいは高校に入学し、遊び方の違う同年代を見て「みんなオトナだなぁ」って強く感じたわ。いま思うとオールでカラオケとか、ファミレスで合コンとか高校生らしい可愛い遊びだったけれどね。

 そしてエイジもそういう遊び方をする子だった。

 当時のあたいは、「ノンケ(異性愛者)の17歳くらいの男の子って、同年代の女子が好きな子が多いから、遊び方も恋の仕方も等身大で素敵だな」って思ってた。彼らと違ってあたいは、そんな年相応の青春よりも公園でフリスビーとか、本屋で立ち読みする方が好きだったし、それに大人の男性が好きだからデートとかもエスコートされたいと思っていたので、自分は未熟なガキンチョの感性のままなんだなぁって感じていたわ。

 悲観的ではないものの、ますます自分は周りの“普通の男子高生”とは違うんだなって思いを深めていた。