『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』など数々の名作漫画を生み出した巨匠・水木しげるさんが亡くなって4年。『ゲゲゲの鬼太郎』は6度目のアニメ化を果たし、11月23日から12月1日まで、調布市で街ぐるみのイベント「ゲゲゲ忌」が開催されるなど、水木しげるさんと彼の残した作品は今もなお愛されている。若き日に水木プロのアシスタントとして研鑽をつんだ劇画漫画の大御所・池上遼一さんに、水木しげるさんとの想い出を語ってもらった。
――本日は現在放送中のテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するねずみ男をまとめた電子書籍『ねずみ男大全』の取材で伺いました。
池上 僕はほとんどアニメを観ていないんですよ。僕の世代は、鬼太郎といえば貸本漫画で描かれていた『墓場の鬼太郎』の世界。僕が水木先生のアシスタントになったときは、『墓場の鬼太郎』が『ゲゲゲの鬼太郎』にタイトルを変えて、「週刊少年マガジン」(講談社)で連載されはじめたときでした。そのときに貸本版の『鬼太郎』の、やや大人向きな、怪奇調でおどろおどろしい絵柄では少年誌にそぐわないということで、キャラを丸く可愛くしたんです。でも、僕は雑誌に載ったほうにはあまり興味がなくて、貸本版のほうが好きなんです。
――池上先生がアシスタントに入った頃は、すでに「週刊少年マガジン」での連載が始まっていたということですよね?
池上 そうです。連載された話のなかには、貸本漫画に描いたアイデアの焼き直しみたいなものもあるんです。「夜叉(『墓場鬼太郎』「下宿屋」より)」とか「吸血鬼エリート(『墓場鬼太郎』「霧の中のジョニー」より)」とか。
僕は正直言って、水木先生のアシスタントになるまで、先生の名前すら知らなかった。漫画家になるために、「とりあえず東京に行こう。呼んでくれるんだったら誰でもいいや」という感じで水木先生の所に行きました。そこに、つげ義春先生がいてビックリしたんです。僕はさいとう・たかを先生の大ファンだったのですが、つげ先生の作品も社会派的な話を叙情的に描かれて大好きでした。
アシスタントになってから水木先生の作品をいろいろ読ませてもらって「すごい先生のところに来たなあ」と思いましたけど(笑)。