沢尻エリカ容疑者の逮捕を受けて、撮影が進んでいたと伝えられていた来年放送予定の大河ドラマ『麒麟がくる』の「代役を立てての撮り直し」が21日に正式発表された。

 この決定に先駆けて、『文春オンライン』では「<緊急アンケート>沢尻エリカ逮捕の波紋 大河ドラマ『麒麟がくる』の撮り直しに賛成? 反対?」を実施。「撮り直しすべき(賛成)」が48.1%、「撮り直ししなくてよい(反対)」が51.9%と、「撮り直ししなくてよい」が上回る結果となった。(#1で全ての結果を公開中)。

麻薬取締法違反の容疑で逮捕された沢尻エリカ容疑者 ©getty

 大河ドラマの演出経験があるNHK出身の映画監督・大友啓史さんにこの結果について感想を聞いた。

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 大友さんは、NHKドラマ『ハゲタカ』や朝ドラ『ちゅらさん』の演出、2010年には史上最年少の若さで大河ドラマ『龍馬伝』のチーフ演出を務め、2011年に独立。来年には、芥川賞原作映画『影裏』や、人気シリーズ『るろうに剣心』新作の公開を予定している。

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「撮り直ししなくてよい(反対)」が多かったことは少し意外です。それは「撮り直すor撮り直さない」という問題以前に、「法律に触れる罪を犯してしまった人間を、これから放送する番組に出すわけにはいかない」という判断が、当然であると考えるからです。

 

 映画など出資を募って制作した作品で、再撮影のための資金を用意することが容易ではないとしたら、当事者が様々なリスクや批判を覚悟のうえで公開に舵を切るという判断も考えられなくはないでしょう。一方で、NHKは国民の方々からの受信料で成り立っている「公共放送」です。「公共のための放送」という視点から考えると、他の映像作品と横並びの判断はできません。

 今回の沢尻さんの件は視聴者も大きな関心を持っているでしょうし、近年社会問題化しているドラッグに関する件ですから、よりセンシティブにならざるを得ないと思います。

 ただし、これまで何度か大河ドラマ(『秀吉』、『龍馬伝』)の演出に携わった現場の人間として言わせてもらうと、撮り直しなんて「ふざけんなよ!無理だよ、そんなの!」とか、「何でよりによって自分の作品で」とか、誰かに泣きつきたい気持ちになってしまうのが正直なところです。

『龍馬伝』ストーリー・ムック(Amazonより)

 以前に、NHKドラマ『ハゲタカ』(2007年)で、代役を立てて再撮影をしたことがあります。ですから、その大変さは理解しているつもりですが、それでも大河ドラマは別格と言っていいほど大変だと思います。しかも放送まで2カ月を切っている状況ですからね。