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映画『億男』で感じた女優・沢尻エリカの可能性

 沢尻さんがこんなことになってしまったとは言え、大河ドラマの制作発表会見で「集大成を見せます」と意気込んでいたことを反芻すると、彼女の現場でのパフォーマンスは相当高かったんじゃないかと予想します。

 去年公開された映画『億男』という作品で、僕は彼女とはじめて仕事をしました。映像で一際栄えるその存在感と、演じるときの集中力には驚かされましたね。『パッチギ!』(2005年)という、彼女にとっての女優デビュー作以降何度か彼女を撮っている山本英夫さんがカメラマンだったので「沢尻って、すごいんですね」「そうなんだよ!」という会話で盛り上がったのを覚えています。

映画「億男」公式ポスター

 彼女の俳優としての可能性や素晴らしさに触れた身としては、自分の才能に唾棄するような行動と今回の顛末に、自業自得とはいえ、本当に残念な思いと強い失望を感じざるを得ません。大河ドラマもきっと素晴らしいものが撮れていたであろうことを考えると、スタッフの悔しさと憤りの深さが想像できます。

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 事実関係はこれからより明らかにされていくのでしょうが、自分が犯した行為の重さ、自分が一番輝くであろう場所で、それを支えている人たちに多大な迷惑をかけたことを、時間が経つにつれ、痛恨の思いで自覚されていくことと思います。

沢尻エリカ容疑者 ©getty

この危機を乗り越えて、素晴らしいドラマを見せてほしい

 それにしても、現場の人間として一番心配しているのは「モチベーション」の問題です。「すごいものが撮れた!」と思っていればいるほど、「もう一度撮り直す」というのは苦行や拷問にも近い、制作者や演出者にとってしんどいことです。

 気持ちを切り替えて撮影に挑むこともなかなか大変だと思いますが、代役の川口春奈さんとともに、スタッフ制作陣が、「沢尻さん以上にもっとすごいものを撮ってやる」という意地を発揮してほしいと、勝手ながら期待しています。

 川口さんは、時代劇が初めてであり、大河ドラマ初出演と聞いていますが、それでネガティブなことなど何1つありません。川口春奈さんにとっては、大きなチャンスでもある。初めてだからこそ、発揮できる力があると思います。スタッフやキャストの皆さんには、この危機を乗り越えて、素晴らしいドラマを見せてほしいと、一視聴者として願っています。

INFORMATION

映画『影裏』 

https://eiri-movie.com/

出演:綾野剛 松田龍平 筒井真理子 中村倫也 平埜生成 國村隼 永島暎子  安田顕他

あらすじ
今野(綾野剛)は、転勤で移り住んだ盛岡で日浅(松田龍平)に出会う。慣れない地でただ一人心を許せる存在。まるで遅れてやってきたかのような成熟した青春の日々に、今野は言いようのない心地よさを感じていた。しかしある日、日浅は突然姿を消してしまう。日浅を探し始めた今野は、日浅の父に捜索願を出すことを頼むが、何故か断られてしまう。そして見えてきたのはこれまで自分が見えてきた彼とは全く違う別の顔。陽の光の下、ともに時を過ごしたあの男の“本当”とは?

2020年2月14日(金)よりロードショー