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「いままで宇宙ステーションに守られていたんだな」ひとりぼっちで宇宙に出た時に感じたこと

足下には地球だけがあった――船外活動で宇宙飛行士・星出彰彦さんが目にした「漆黒の闇」

2019/11/30

genre : ライフ, , 読書

4か月間の滞在でも全く飽きなかった“ISSから見る地球”

「実は私は初めて宇宙に行く前は、飛行士の誰もが『地球が美しい』と言っているのを聞いても、それはそうだよな、と思うだけだったんです」と、彼は振り返る。

EVA中に撮影された地球 ©JAXA/NASA

「地球の美しさは地上にいても想像できる。正直に言ってそう思っていました。だから、私自身は宇宙に行ったら、地球よりも星を眺めたいと考えていた。それなのに実際にISSから地球を見ていると、本当に目が離せなくなってしまったんです。宇宙ステーションは90分で地球を一周するわけですが、山や海や都市、夜明けや昼や夜と景色が刻一刻と変化していく。それは時間があればいつまででも見ていたいと思わせる美しさで、4か月間の滞在でも全く飽きませんでした。もし仕事ではなく旅行者として宇宙に行ったら、私はずっと窓にへばりついていると思います」

 だが、EVAを行なうためにISSの外に出て、何も遮るもののない状態で地球や宇宙を見たとき、彼の胸に生じたのはさらに別の感情だった。

「宇宙ステーションのなかから宇宙を見ても、結局は窓を通して見ているわけですから、視界には船外の構造物や船内の窓枠が入ってしまいます。その窓もけっこう厚いので、どうしても層の反射など、何かしら視界を遮るものがあるわけです。それが宇宙に身一つで出て行くとなくなり、『これまでは守られていたんだ』という感覚を初めて感じました」

 その光景はISS内からのものとはどのように違うものだったか。

「いま自分は宇宙全体を肌で感じているんだ」船内との感覚の違い

「もう、何て言うんですかね。船外で何も目の前に遮るものがない状態で宇宙空間にいたときの感覚は、やはり船内にいたときとはぜんぜん違いました。目の前には地球と宇宙しかない。宇宙の闇の深さ、それに対する昼間の地球の青さ。その世界を宇宙服のバイザーを一枚隔てただけの肉眼で見ていると、息を飲むとはこういうことなのかと感じました。

 足下に見えた地球を含めて、いま自分は宇宙全体を肌で感じているんだ、という気がしたんです。あのとき、私の耳には他の宇宙飛行士と地上のチームが交信している声が聞こえていました。仕事の緊張感はもちろんあって、次の作業のことは頭の片隅にありました。でも、ロボットアームが作業場所に着くまでには、まだ少し時間がかかると分かっていました。

 何かを考えて、次のアクションを起こす必要がなかったので、『いまこの瞬間だけはこの時間を独り占めしたい』という気持ちになったものです。とにかく自分だけの時間として、その景色を見ていたい。目の前にあるこの景色を、とにかく集中して吸収させてほしい、と思ったんです。だから、その数分のあいだは、どうか誰も俺に話しかけないでくれ、と念じながら、ただただ地球と宇宙の闇に対峙していました」

宇宙に出て行くこと、そして、人類が宇宙に住むこと

 彼にとってEVAでの「数分間」は、自らの人生にとっての大きなハイライトの一つとなった。

「宇宙に出て行くこと、そして、人類が宇宙に住むことによって生み出されるのは、無限の可能性なのではないかと私は思っています」と、彼は言った。

「いまは一握りの宇宙飛行士だけの世界ですが、多くの人が宇宙に出て行くようになったとき、新しい産業だけではなく、新しい文化や思想が生まれてくるのではないか。それらは地球から遠くに行けば行くほど新しくなり、また、人類はそうすることを求めているんじゃないか……。

 宇宙ステーションの外に出たとき、目の前に広がる宇宙の底のない闇に、私は畏怖を感じました。同時に、この地球があってこそ、初めて僕たちはより遠くに行けるんだな、と確かに思った。例えば宇宙ステーションにある空気も水も、結局は地上から持ってきたものであるわけです。

 地上からのサポートなしに、人は宇宙では暮らせない。地球という存在がなかったら、私たちはこの真っ暗な宇宙で生きてはいけない。そういう状態に長く身を置いてみると、『自分は地球に生かされているんだ』というこれまでの漠然とした感覚に、確かな説得力が出てきたと感じています」

 人はなぜ宇宙へ行くのか――。

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