不運に見舞われた春季キャンプ

3月1日大安
カープのキャンプ最終日。

 2017年の春季キャンプは、昨年までと比べて違うところがたくさんあった。

 グラウンドではチャンピオンフラッグが風に舞い、監督・コーチ・選手それぞれの左肩にはチャンピオンエンブレムが輝いていた。これまでガランとしていた地元の油津商店街は明るくなり、活気が増した。「カープ一本道」という赤い道ができて、天福球場までの足取りも軽くなった。

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日南春季キャンプが行われた天福球場 ©大井智保子

 日南と沖縄の両方で優勝パレードが行われ、日本全国から沢山のファンが集まり笑顔で旗を振った。特に日南では、手を伸ばせば選手にふれられる距離での徒歩パレード。他球団と比べるとファンサービスの控えめなカープが、そこまでしてくれるという喜びも増すイベントとなった。

「カープのキャンプは他と音が違うらしいですね~」と、マスコミの声まで変わった。

 昨年のセ・リーグ王者として、まだまだ優勝の余韻を楽しめるキャンプのはずだったが……。

打撃投手・ブルペン捕手6名 ノロウィルスに感染
中﨑投手 インフルエンザ
大瀬良投手 右脇腹の違和感
福井投手 背中の張り

 もし、宿のご飯を食べていなければ……。あの宿に泊まっていなければ……。集団ノロウィルスなんて前例がないし、不運としか言いようがないことが起こってしまった。昨年「運」を使いすぎていなかったら……。

 今年こそは先発へ戻りたいという強い意気込みで臨む大瀬良投手。黒田さんの帰広を「枠が減る」と言いながらも、黒田さんの影響で自分らしいピッチングを取り戻せた福井投手。"今年が勝負"の先発2人の不調は「黒田さんの穴を埋める」ということの難しさを物語っているのかもしれない。

なかなか埋めることができない「黒田の穴」

「マエケンの穴を埋める」が暗黙のスローガンだった2016年のキャンプ。「マエケンの穴はどうやったら埋まると思いますか?」という質問が絶えなかったが、見事、右の野村、左のジョンソンで数字を埋めることが出来た。黒田さんが渡米した後のマエケンがそうだったように、出ていく選手がいれば若手が育つ。「育てる野球」こそがカープであり、わたしたちのコイする市民球団。シーズン途中には「マエケンの穴」という言葉すら誰も使わなくなっていた。

 しかし、「黒田さんの穴を埋める」ことはこれまでやってのけた「穴埋め」とは全く別物なのだ。

 チームだけでなく、ファンの心にも「黒田さんの穴」がぽっかりと空いてしまっている。私自身、どうやって埋めたらいいのかを、毎日のように考えていた。ドラマに夢中になって夜更かしをする。美味しい物を大好きな仲間と食べる。好きなアーティストのライブに出向く。旅行を楽しむ。鯉バナじゃなく恋バナで盛り上がってみる。好きなことはこのオフに全部してみた。

 それでも「黒田さんの穴」は埋まっていないのだ。

 もし、それを埋めることができるのだとすれば、やっぱりカープしかないのだろう。カープの2連覇、そして日本一を見ることでしか、きっと埋めることはできないのだろう。