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顧問は競技未経験が半数という「部活あるある」

 以上が、とある中学校教諭の体験談である。幸いにして、その先生は保護者全体と会合の機会を何度かもつなかで、自分の立場を理解してもらうことができ、いまは保護者と良好な関係で、部活動指導にあたっている。

 日本体育協会の調査(「学校運動部活動指導者の実態に関する調査報告書」)によると、運動部顧問の半数近くが、その競技種目の経験がない「ど素人」である。
泳げない水泳部顧問、受け身もできない柔道部顧問、楽譜が読めない吹奏楽部顧問、字がヘタな書道部顧問……。「超ど素人」の顧問も珍しくない。保護者や生徒のほうが、その競技種目のことをよく知っているというのも「部活あるある」だ。

運動部顧問における競技経験の有無

ただ働きの「部活動顧問」という仕事

 まったく専門性のない教員が、「顧問」という名のもとで、日常の指導、試合時の采配、レギュラー/補欠の人事など、その部活動のすべてを担っている。「部活がつらい」先生が出てくるのも当然だ。

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 ここで通常の「国語」の教科を考えてみたい。教員は大学時代に、国語を教える専門家としてのトレーニングを受ける。その専門性をもって学校現場に入っていく。「国語がつらい」わけがない。

 他方で教員は、大学時代に部活動の指導方法は学んでいない。なぜなら部活動は、教員の本務ではないからだ。制度上は、生徒も教員も、自主的な活動として部活動に参加することになっている。ボランタリーな活動ということだ。

 だから、国語を教えていれば給料は出るけれども、部活動の指導に給料は支払われない。平日の放課後、先生たちは毎日ただ働きで部活動を指導している。土日も4時間以上で3000円程度の手当て(交通費、弁当代を含む)があるだけだ。

 先生は、教育者である以前に労働者である。やる必要のない仕事を、毎日休みもなくボランティアで担っている。先生が自分の専門である教科指導に集中するためにも、部活動の負担をいかに減らしていくのか。外部指導者の活用や、活動日数・時間数の制限など、具体的な負担軽減策を推進していくことが求められる。