東京五輪に向けて、子どもたちのスポーツ振興に教育現場でも関心が高まっているわね。一方で部活や青少年スポーツの過熱化も問題になっている。月曜日は週末の練習の疲れで生徒たちがぐったりして、授業中も居眠りばかり……。学力の低下だけでなく、健康面も心配だわ。
そんな状況に歯止めをかけようと、二〇一六年二月、佐賀市教育委員会が小学生が所属するスポーツクラブに対して「学校施設の利用を制限する」との方針を打ち出したの。ところが、クラブの指導者たちが猛反発! せっかくの対策が骨抜きになってしまった。これにはボクもがっかりよ。だって、最近のスポーツ熱には明らかに行き過ぎの面があるもの。
中学や高校では部活動が「ブラック化」。生徒だけでなく、顧問の教師も過労死寸前! 自分たちの家庭が崩壊すると悲鳴を上げている。全国の若手教師が「部活の顧問をする・しないの選択権を下さい」とネット上で署名運動をしているほどなのよ。
練習の量だけでなく質も問題ね。柔道を例にとると、中学や高校内の柔道事故で百二十一人もの生徒が命を落としたのよ(一九八三年以降の統計)。主因は指導者の技量不足。未経験の競技を担当している先生が本当に多いの。海外では指導者の研修が厳格だから、こんな事故は起こらない。日本でも指導者の研修とレベルアップが必要ね。
こんなに問題があってもスポーツ活動が過熱化するのは、親の支持があるからなの。子どもが全国大会で優勝すると、その競技に強い高校や大学に推薦入学できる。進学に有利だから後押しするのよ。また、親が週末も忙しい家庭では、スポーツや部活が子どもの居場所になっている面もある。単純には解決しないけど、やはりバランスは重要。東京五輪を機に「子どもにとって望ましいスポーツ振興」について熟考すべきね。