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2020年代の日本アニメに勝ち目はあるのか?

――製作委員会型に代わる、こういうシステムだったら勝てるという方法はなさそうでしょうか。

福原 先ほど言ったようにアニメは2兆円という産業なんですけど、その金額を1社で全部ハンドリングしてる会社があったら世界を相手に戦えると思うんですよ。大政奉還して、でかい1社で戦えればいいんですけど、やっぱりそうはならないですよね。ステークホルダーが多すぎるし、よほどの傾奇者じゃない限りそんなことやらないですよね。

 

――この先、2020年代の日本アニメには勝ち目はあると思いますか?

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福原 今まで配信の話をしてきましたけど、日本人ってなんだかんだでテレビ見ちゃうじゃないですか。テレビに電波代3000万~4000万円とか払うんで、テレビを使わなくなるだけでコストが4000万円なくなるんですよ。そう思うと、1円も払わずにネットで配信できるならそっちの方がいい。でも、アマゾンプライムにすら入ってないという人って案外たくさんいるんですよ。一気にデジタルシフトできればまだ勝ち目はあると思うんですけどね……。でも成熟した国ほどいろいろな価値観を認めるべきなんで、そこは難しいんでしょうけど。

――ライフスタイルがバラバラになるほど、ディストリビューションのコストが上がるんですね。

福原 そうです。みんなが一箇所だけ見てるんなら、そこにだけ流せばいいわけだから。ネットはテレビと違って無限に表示できるし。IT企業がもうすこし頑張ってくれればと思うんだけど……。別に僕は中国大好きとかじゃないけど、あの国の良さを日本が取り入れたらいいのになと思います。やっぱり、失敗した人を叩いてたらヒーローは生まれないですよ。ウルトラマンはビルとかをものすごく破壊するけど、その問題点を指摘してウルトラマンが出動できず怪獣が野放しならその方が問題じゃないですか。そういうところを乗り越えないと厳しいだろうと思います。

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 福原慶匡プロデューサーが“中国産アニメ”や『ULTRAMAN』についても語ったオリジナル記事「もはや中国は日本と組むメリットはない」は『週刊文春エンタ! アニメの力。』に掲載されています。

福原慶匡(ふくはら・よしただ)

1980年生まれ。アニメ・音楽プロデューサー。実業家。川嶋あいのマネージャーからキャリアをスタートさせ、アニメ制作に携わり、2013年より株式会社ヤオヨロズの取締役。ヒット作『けものフレンズ』のプロデューサーとしても知られ、現在も多数の企業の取締役を務める。コンテンツ研究者として慶應大大学院博士課程にも在籍。