「製作委員会システム」は時代に合わなくなっている
――意外に早く、福原さんが以前から危機感を持っていたような状況が来てしまったわけですね。
福原 しかもここにきて、意思決定に時間がかかる製作委員会システムが、せっかちな中国とビジネスするにあたってついていけなくなりつつある感じがありますね。アニメの作り方って3パートにわかれてて、原作開発っていう部分と、制作のプロダクション、あとは最終的に作品を売るビジネスっていう3つなんです。原作開発はコミックを掲載してる出版社がやってることが多い。で、制作はスタジオで、ビジネスは製作委員会がやってます。この3パートを合わせると、業界全体のお金が2兆円あるんですよ。
――2兆円……。
福原 でも、制作だけだと2000億円くらいで、残りの1兆8000億円はだいたい製作委員会とか出版社が持ってるんですよ。製作委員会システムを作った時というのはビジネスを担当するパッケージメーカー主導だったんです。だからパッケージメーカーに有利な仕組みになってて、それでうまくいった時代が20年近くある。今業界にいる人は入社した時からそのシステムで回ってるんですね。特に意見が強い会社はこのシステムの中で勝ってた会社なんで、なかなか自分が不利になるような契約に賛同しないじゃないですか。
――制作サイドが買い叩かれる形になってるんですね。
福原 でも90年代から2010年代初頭くらいまでは、製作委員会システムはスタジオにとってはリスクを伴わずに作品を作れる仕組みっていうことで、すごくよかったんですよ。ただ、スタジオに支払われる金額自体が見合わなくなると、それは成立しませんよね。出資してる企業からすると「今まで通り払ってるじゃん」って話なんだけど、そうは言っても相場が変わってるわけで。でも金払う側がイニシアチブを持ってるから、金をもらうまでは頭を下げるしかないんですよね。結構本当に、打開策がないんです。ちっちゃく勝つことはできるかもしれないけど、業界全体が勝つ方法ってないんじゃないかな。
――そのような状況で、日本のアニメ業界はどうなっていくと思いますか?
福原 まずエンタメ自体がなくなることは絶対ないし、アニメがなくなることはないと思います。ただ、今の日本って中小のアニメスタジオが大量にあるんで、それがどんどん統合されていくと思います。
――統合ですか。