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東京都議会選挙までの『小池劇場』のエンターテイメント

 豊洲も東京五輪も、恐らくはいまならば右も左も小池百合子女史を支持できる状況であって、取り組む東京都議会選挙までの『小池劇場』のエンターテイメントなんですよ。その出し物の一つが「石原慎太郎、解体ショー 百条委員会参上でござるの巻」でしかないという。そこで結論めいたものなど出る気配もないけど、面白そうだからやろうじゃないか的な。分かる。やっぱここで歴戦の爺さん政治家が、後任都知事である劇場女主人に「バーカ」と言うことそのものが演芸なんですよ。そこで客席が紅組と白組に分かれて座布団とかおひねりとか飛び交って、罵声あり涙ありで話題が沸騰して、そのまま小池百合子女史が大見得切って「これからは私が仕切ります」みたいなことを言って、都議会選挙に突入して議席一杯取って大団円、みたいな。自民党と民進党と公明党がただただがっかりして終わり、という。

©文藝春秋

 もちろんその意味では都民は置き去りだし、本当の意味で東京都に必要な政策の大半は具体的な進展を得ることなく放置されかねない状況なんですけど、そこは東京都自体が長年培ってきた組織がしっかりしていれば、都知事と議会が空中戦してても実務はちゃんと回るわけですよ。そういう堅牢な都庁組織を作ったのは他ならぬ石原慎太郎さんだったという。それも、石原さんが全方位に有能だったからそういう組織になったんじゃなくて、石原さんが良くも悪くもワンイシューで動く政治家だったから、彼が関心を持たない領域の政策は都庁に事実上丸投げだったから育っていた、という。世の中、よくできたものです。

野田数さん、音喜多駿さん、カジュアルにきわどい役者たち

 その石原さんも、四期目の都知事選に立候補するのかしないのかというゴソゴソしていた時期には、古傷もあって「石原慎太郎・汚職摘発説」みたいな風聞が取りざたされておりました。それが出火したら石原慎太郎さんは都知事に出るどころか晩節を穢していたかもしれないし、どこぞの紀尾井町の出版社から小説集が出ることも無かったかもしれない。どこだろう、聞いたことも無いな。

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 でも、そういう石原慎太郎さんの本当の意味での腫物を触ることなく、激しくどうでもいい「築地から豊洲移転で石原慎太郎の関与はあったのか」という演題一本で百条委員会に臨んでしまう小池百合子女史は男前なわけです。最終的な決済責任者である都知事だったのだから、専門家の意見を聞き、下から言われたものを政治家として納得して判子捺しました、で終わる話ですよね、これ。それよか、石原帝国とまで言われた東京都に長年君臨したとき、小池百合子女史が嫌いでやまない「石原家の誰それがやっていた事業に都から便宜が図られたことに対する吟味」とかやれば、自ずから石原さんは崩壊するんですけど、それをやらない小池女史の胆力の強さはたいしたものです。分かってないだけかもしれないけど。

 また、野田数さんであれ音喜多駿さんであれ、当初は軽量級と見られていた小池百合子側近のほうが、むしろ若狭勝さんや石破茂さんより名声を集めてしまうという現状もまた、気になるわけです。政治家っぽい政治家が慎重に物言いするよりも、カジュアルにきわどい発言もお気楽にどんどん投げる、空中戦やメディア戦略に長けた人物のほうが劇場主にとってはとても都合が良いのかもしれません。

 だからこそ、いざ石原慎太郎解体ショーやっても食べられる身が少ない、それでいて頑固で硬い食材を料理するのはむつかしかろうと思うわけです。