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西谷駅には何がある?

 そんな西谷駅、さすがに二俣川駅のように立派なものではなかったが、それでも橋上駅舎が南北に通じている構造は必要十分。まずは国道16号に近い北口へ。駅舎から階段を降りてゆくと、これがなんとまあ、実に細い路地のような道に通じているのである。二俣川駅の立派さを味わった後だからか、ずいぶん狭苦しく感じる。ほんの1分ほど歩けば国道に出てそこにバス停やタクシー乗り場もあるようだが、古い住宅地の中の私鉄駅というのはこういうものなのだろうか。

西谷駅には何がある?

 対して南口。こちらは少しだけ立派な階段で駅舎から降りる。駅前はロータリーがあるほどではないけれど、北口よりは広いスペースがあった。ならばクルマも駅前までやってこれるかと思ったが、駅前に通じる道はどこも細く、やはりクルマで送迎するというような駅ではないのだろう。駅前には小さな商店がいくつかあって、スナックや飲み屋もいくつか軒を連ねていた。

 そうした駅前のお店のひとつ、金子商店というたばこ屋さんのご主人に話を聞かせてもらった。なんでもこのご主人、生まれも育ちも西谷だそうで、この地域のことを知り尽くす生き字引のような存在だ(ちなみに若い頃は米軍基地を回って演奏し、今では地元の主婦たちにギターやドラムを教える“ロッカー”としての顔も持っている地域の有名人だとか)。

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少し窮屈な印象のある西谷駅北口
南口は北口よりはいくぶん余裕がある

「昔は二俣川より西谷のほうがにぎやかだった」

「今じゃ二俣川とか隣の鶴ヶ峰駅のほうが栄えているけどね、実はもっと昔は西谷のほうがにぎやかだったんですよ。大きな工場もいくつかあって、そこで働く人たちも使っていたしね。向こうの方は一面田んぼだったんだから」

 ところが、特急や快速の停車駅にならなかったことで人の流れが変わってしまい、西谷駅周辺は再開発から取り残されて大きなマンションもなく駅前の道も細いまま。だからこそ、ご主人は直通開始による“変化”に期待しているという。

駅前の道はどこも細かった
お話を聞かせてくれた金子商店(たばこ屋さん)のご主人

「こういうものはすぐに効果は出ないですよ。でも、何年か経ったら一気に変わってくるんじゃないかなと。だいいち、今でも少しずつこの辺に住む人は増えているんです。ベビーカーを押している家族連れとかもよく見るようになりましたよ。だってね、山も川もあってしずかで空気もいいし、住むには本当にいいところだから」

 横浜まではもともと15分もかからない。それが直通運転開始によって新宿までも乗り換え無しで1時間。利便性と住環境の良さが知れ渡れば、たしかにこの西谷のあたりが劇的に生まれ変わってもおかしくはない気がしてくる。

 と、最初の思惑とは少し違う相鉄の旅になってしまったが、真新しく開発された立派なターミナルや昔ながらの住宅地の駅と、意外と個性のある相鉄沿線。これが相互直通運転でどう変わってゆくのかにも注目したいところだが、やはり最後にこれだけは言っておいたほうがいいだろう。

 終電間際に新宿や渋谷から埼京線に乗る際は、相鉄直通で寝過ごして気がついたら相鉄沿線、となったら“もうおしまい”である。駅前にホテルはないし(ネットカフェくらいはあるかもしれない)、終電で終点の海老名駅まで行ってしまったら、もう小田急線に乗り換えても新宿まで行くことはできない。忘年会シーズン、新宿や渋谷で飲む折は、ぜひ気をつけたいものである。

こちらは2018年に登場した20000系。東急東横線・目黒線に乗り入れる計画がある

写真=鼠入昌史