すでに日本の真冬並みの気温となった11月29日の韓国・ソウル市。瑞草区のソウル中央地方裁判所前にコートを着込んだ若い女性ら十数人が集まり、「オ・ドクシク判事は服を脱げ」と書かれた紫色の横断幕を掲げた。

元KARAのク・ハラ ©AFLO

 女性たちはク・ハラの自殺を巡り、韓国の司法に抗議しにやってきた女性団体などのメンバー。「服を脱げ」とは「法服を脱げ」、つまり判事の職を辞せよという意味だ。参加者は「司法機関が女性の安全を脅かしている」などのシュプレヒコールを上げ、若い女性アイドルの死に対する司法の責任を厳しく問い質した。

 オ判事は、ク・ハラの元恋人で美容師のチェ・ジョンボム被告の裁判を担当した人物。チェ被告はク・ハラとのトラブルを巡り、今年1月に傷害、強要、脅迫、器物損壊、そして「性暴力処罰法違反」容疑で在宅起訴された。性暴力処罰法違反容疑とは「性的欲求や羞恥心を誘発し得る身体部分を強制的に撮影」、つまりク・ハラ本人の意思に反して性的な動画を撮影した、という疑いだ。

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無罪判決が下った「リベンジポルノ」容疑

 ク・ハラの悲報に行き場のない怒りが鬱屈する韓国社会でいま、このチェ被告とオ判事の2人が世間の強い非難を集めている。

ク・ハラ自殺を巡って裁判官に抗議する女性たちを報じたMBCテレビ(ホームページより、11月30日)

 チェ被告は昨年8月にク・ハラと旅行した際、その後ろ姿などを撮影。翌9月にク・ハラの交友関係を巡って激しい喧嘩になった際、この動画で「芸能人生を終わらせてやる」と脅迫したとされる。チェ被告は実際に芸能メディアへメールを送ったものの、動画自体はク・ハラにしか送信していなかった。だがいつ公開されるか分からないという恐怖心が若い女性の精神を蝕んだのは、想像に難くない。

 この事件は芸能メディアだけでなく、女性団体からも大きな関心が寄せられた。昨年10月にソウルで行われた盗撮被害に絡む大規模な集会でも、ク・ハラの「リベンジポルノ問題」として争点化されている。