最近、メディアで「文在寅政権は米国に切り捨てられる!」、「韓国が在韓米軍の駐留経費負担の増額に応じない場合、米国は駐留規模の大幅縮小を検討」、「GSOMIAを延長するよう働きかける際、アメリカは(カードとして)『在韓米軍撤退』を主張した」などの論説がみられる。

 これを見た人々は「米国が韓国を切り捨て、在韓米軍を撤退するかもしれない」と思われるかもしれないが、私はそれは間違いだと思う。筆者は、米国が中国と覇権争い(目下経済戦争などを展開中)を行っている限りは、絶対に韓国は手放さず(米韓同盟を解消せず)、在韓米軍の撤退などありえないと確信する。

 そして、米中覇権争いの中で不安定化している朝鮮半島を安定化させる方策としては「クロス承認」が望ましいと確信する。以下その理由について述べる。

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文在寅大統領 ©AFLO

GSOMIA問題は「米国と中国の問題」である

 日韓間でGSOMIA問題が争点となっている。だが、この問題の本当の当事国(利害関係国)は米国である。さらに言えば、もう一つの“影の”当事国は中国である。

 地政学的に見て、朝鮮半島は「大陸国家・中国と海洋国家・米国の攻防の地」だ。現在経済戦争を展開している米中にとって、朝鮮半島は熾烈な覇権争いを演じる舞台(一正面)なのである。

 米国にとって、朝鮮半島は太平洋に進出しようとする中国を封じ込めるための(封じ込め政策の)重要な“砦”だ。そして朝鮮半島の南半部を占める韓国は、その軍事拠点として極めて重要である。米国が中国を封じ込める上で、韓国は「東翼」――中国封じ込めの東の端――に当たる。

トランプ大統領 ©JMPA

 軍事において「翼」は極めて重要である。「翼」を撃破(突破)されることは、防御陣(封じ込めの陣)の崩壊につながる。従って、防御陣地を構成する際は、「翼」は険峻な山や谷などの地形に依託するのが定石である。

「対中封じ込め」の陣立てにおいて、「東翼」は日本も含めた「二段構え」になってはいるが、米国にとって韓国を失うのはやはり痛手だ。