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「蔡英文の再選を阻止せよ」

 その韓国瑜は今、2020年総統選の国民党候補者として蔡英文総統と戦っている真只中だ。ゴン青はスパイチームに「どんな代償を払ったとしても、(台湾独立志向の)蔡英文を再選させて、中台統一を遠のかせてはならない」と発破をかけ、大掛かりな準備を始めていたという。

 一方の蔡英文は日ごろから、「われわれには主権があり、政府があり、民主的で自由な制度がある」と主張。「台湾が中国に取り込まれれば、台湾人の自尊心や独自性が消滅する」と繰り返し警告を鳴らしている。

「2000万元を受け取った」と名指しされた韓国瑜は11月24日、王の証言を「荒唐無稽」と一蹴。「もし1元でも中共のカネを受け取った事実が明らかになれば、高雄市長の職を辞することも厭わない」とまで言い放っている。

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韓國瑜のインスタグラムより

 王立強の“告白”がメディアで報じられると、中国共産党はすぐさま反応した。

 11月23日午後、上海市公安局静安分局は「王立強という人物は詐欺容疑で指名手配されている男。彼が所持する中国パスポートと香港居留証はいずれも偽造されたものだ」との声明を発表、王の言い分に真っ向から反論した。

 声明によると「福建省光沢県出身の27歳で『中国の元スパイ』を自称する王立強は2019年2月、ニセの輸入車ディーラーを立ち上げ、知人らから460万元(約7200万円)を騙し取った容疑で逮捕された。同4月に懲役1年3月、執行猶予1年6月の判決を下されたが、王は偽造パスポートを使って香港に高飛びした」と説明。不当な手段で海外逃亡した犯罪者と断じた。

豪州メディアに素顔を明かした王立強 ©getty

台湾が「国家安全法」違反で向心夫妻の身柄を拘束

 さらに台湾政府の情報機関、法務部調査局国家安全維護処が11月24日夜、台湾桃園国際空港第2ターミナルで向心夫妻の身柄を拘束したことが明らかになり、台湾中に衝撃が走る。

 容疑はスパイ活動を罰する「国家安全法」違反。ふたりは11月21日から台湾に「私用で」滞在し、香港に戻るところだった。身柄はそのまま台湾台北地方法院検察署(台北地検)に移送され、長時間にわたり事情聴取。12月3日現在も台湾からの出国を禁じられている。

台湾では、2020年1月11日に総統選の投開票が行われる ©iStock.com

 向心が会長職をつとめるCIILは11月25日付の公告で、会長夫妻が台湾で拘束された事実を公表。同時に「王立強という青年が当社に在籍した事実はなく、彼が話している内容はすべてでたらめ」などと強調した。

 取り調べに対しても、向心夫妻は「王立強と名乗る青年とは面識がない」と主張。だが台湾当局は、向心、ゴン青、王立強が一緒に撮られた「スリーショット」を入手しており、その証拠写真を夫妻に突きつけたという。向心夫妻は3年前に不動産売買会社の設立を台湾当局に申請したものの、人民解放軍や軍の情報研究機関と密接な関係にあることを理由に却下されていた。その後も夫妻はたびたび訪台し不動産を購入するなどしていたため、台湾当局がマークしていたらしい。